2016 Fiscal Year Research-status Report
高効率水和触媒の創出を指向した遷移状態制御化学の開拓
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15KT0141
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中 寛史 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (70431517)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 有機化学 / 水和反応 / 触媒 / 遷移状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,効率的な有機物質の水和触媒を生み出すために遷移状態制御の化学を開拓することにある.平成 28 年度はそれまでに導出したコバルトポルフィリン錯体を用いたアルキンの水和反応の反応経路を微修正し,求核剤をアニリンとしたアルキンのヒドロアミノ化反応の経路を導出した.さらに理論計算および速度論実験の結果から,メタノール中と比較して水-メタノール混合溶媒中で反応速度が低下する原因が,水が強固にコバルトに配位するためであることが示唆された.この知見に基づき積極的に水等価体を利用する水移動型触媒機構を考案し,これに基づく反応開発が高難度な有機物質の水和反応の実現に結びつくと考えた.その結果カルボン酸を求核剤とするエステルの分解反応およびカルボン酸アミドを求核剤とするニトリルの分解反応を見出した.以上の検討と並行してフッ素化されたコバルトポルフィリン錯体によるアルキンのヒドロアルコキシ化反応を開発し,その触媒活性と基質適用範囲を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたコバルトポルフィリン触媒によるアルキン以外の基質にかかわる水和反応の遷移状態モデリングは達成できなかったが,アルキンの水和反応における反応溶媒のメタノールが水の等価体として働くこと,水がアルキンとメタノールの間の反応を阻害することを明らかにした.この知見に基づき積極的に水等価体を利用する水移動型機構に基づく反応開発を着想し,カルボン酸を求核剤とするエステルの分解反応およびカルボン酸アミドを求核剤とするニトリルの分解反応を見出した.以上の仮説と結果は研究目標に掲げていたエステルやニトリルの効率的な水和反応触媒の設計に資すると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成 28 年度までに得られた知見を踏まえて,カルボン酸およびその誘導体を求核剤とするカルボン酸エステルやアミドからカルボン酸への変換を可能にする触媒の設計,合成,評価を中心に研究を展開する.
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Research Products
(5 results)