2016 Fiscal Year Research-status Report
量子化学計算によるランタノイド発光センサーの機構解明と配位子デザイン
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15KT0142
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
畑中 美穂 近畿大学, 理工学部, 助教 (80616011)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 希土類発光 / 密度汎関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ランタノイド錯体は、周囲環境によって発光波長は変化しないものの、発光強度は大きく変化するという特徴を持つ。例えば、ビピリジンやフェナントロリンの誘導体を配位子に持つランタノイド錯体の発光量子収率は、配位子の側鎖に大きく依存することが知られている。そこで、様々な配位子を持つユウロピウム錯体について、一重項基底状態(S0)、三重項励起状態(T1)の局所安定構造及び、S0とT1のポテンシャルエネルギー曲面(PES)の交差点、T1とランタノイドの励起状態(発光準位)のPESの交差点を求め、発光量子収率の実験値との相関を調べた。その結果、T1の局所安定構造とS0・T1の交差点のエネルギー差と発光量子収率の間に相関関係があることが分かった。 さらに、配位子1分子とナトリウムカチオンからなるモデル分子を用い、S0とT1だけでなく、S0と一重項励起状態(S1)の交差点などの関係も調べたところ、T1の局所安定構造とS0・T1の交差点の間のエネルギー差と、S1の局所安定構造とS0・S1の交差点の間のエネルギー差の間にも相関関係があることが分かった。 以上のことから、ランタノイド発光錯体の発光量子収率は、(ランタノイドの種類を変えない場合)配位子からの消光の反応障壁によって見積もることが可能であることが分かった。また、配位子からの消光過程は、S1からS0への内部転換を経る過程が主であると考えられるが、この過程の反応障壁は、T1からS0への項間交差を経る過程の障壁と相関しているため、(計算が比較的簡便な)T1とS0の交差点のエネルギー値から見積もることが可能であると分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の取り組みによって、実験値との相関関係を見出すことができ、分子設計の方向性が明瞭になってきた。また、昨年度取り組んでいた2種のランタノイドを含む材料についての研究についても論文が採択されたため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、分子性結晶や金属有機構造体(MOF)の発光材料について、理論的に発光特性を予測できるような計算方法を検討していく。特に、MOFについては、発光センサーとしての応用例が多数報告されているが、予備的な検討から、錯体と同様の方法での計算では、T1のエネルギーの見積が困難であることを見出している。この方法を解決するために、バンド計算等を取り入れる試みを行っていく予定である。
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Research Products
(11 results)