2016 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母の人工進化系構築 ―生命の適応的機能創出をデザインする―
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15KT0147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中岡 慎治 東京大学, 生産技術研究所, 派遣研究員 (30512040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 英良 国立研究開発法人理化学研究所, 科学技術ハブ推進本部, 上級研究員 (30725338)
細田 一史 大阪大学, 未来戦略機構, 特任准教授(常勤) (30515565)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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Keywords | 人工培養系 / 数理モデル / 進化のダイナミクス / 複合オミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人工的な実験生態系を対象に実験、数理解析を行うことで、進化や適応によって新機能が創出される生命のロバストな一面を予測し、実験的に検証することを目指して研究を進めている。平成28年度には、平成27年度に進めた理論研究に、実データや実験研究を反映させるの取組みを進めた。具体的には、以下の複数の解析を実施した。
[1] 共培養系におけるマルチスケールモデルの構築と適応ダイナミクスの理論化を行った (論文執筆中)。具体的には、微生物種の細胞内における分子ダイナミクスと細胞の増殖率 (適応度に相当) をリンクし、分子レベルの挙動をベースにした個体群数理モデルを構築した。続けて、適応進化の理論体系に基づき、ある変異種が導入された場合に変異種が定着できるかを考察し、系が変異種に置き換わるための理論的条件を計算した。[2] 膨大なChIP-seqデータに基づいた転写制御ネットワークの構築が進展した。このネットワークとトランスクリプトームデータに基づいて、転写制御因子を推定するアルゴリズムを開発し論文発表した(Kawakami et al. Nucleic Acids Research 2016)。[3] 微生物叢の 16S-seq 解析のワークフローを確立し、人工生態系研究におけるオミクス解析の基盤を整備した。[4] 2種類の大腸菌による相利共生系の実験進化について、前年度までに得られていた実験結果と解析をまとめ、集団内相互作用の適応進化における新たな概念を実験結果とともに発見した(論文執筆中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、共培養系におけるマルチスケールモデルの構築と適応ダイナミクスの理論化、オミクスデータから転写制御ネットワークや微生物菌叢解析基盤の構築、2種類の大腸菌による相利共生系の実験進化について、成果をまとめる段階まで進んだ。それぞれは成果として論文にまとめている段階である。本研究のタイトルで掲げた、出芽酵母も含めた異種から構成される人工進化共培養系を解析するための足がかりができた。このため、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 平成28年度に得られた各成果を統合する。具体的には、共培養系におけるマルチスケールモデルに、転写制御ネットワークや微生物菌叢の影響を組み込む形で、実データを反映させた数理モデルへと改良する。[2] 2種類の大腸菌による相利共生系の実験進化の解析結果で見られる現象において、進化を駆動している因子の候補が判明しているため、なぜこれら因子が実験進化で観察されるような共培養維持に必要か、統合した数理モデルを用いて実験データからではわからない側面の理論的考察をまとめる。[2] 分担研究者の川上英良博士と連携し、今までに構築したネットワークに基づいて、共生培養系のオミクスデータ解析および時系列解析を進展させる。[3] 分担研究者の細田一史博士と連携し、人工進化実験系を発展させる。具体的には、出芽酵母の人工進化の実験系構築を行い、解析に着手する。[4] 大腸菌・出芽酵母といった異種間の人工進化共培養系について、[1-3] で構築済みの成果をベースに、共培養系維持に重要な因子探索とその理論的意義に関する考察をまとめる。
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Causes of Carryover |
平成28年度では、出芽酵母も加えた人工進化今日培養系に対してデータを取得する前段階として、分担研究者が確立済みである2種類の大腸菌による相利共生実験系を、理論・実験研究双方から十分に検討することにした。したがって、今年度に実施予定のデータ取得は、次年度に繰越して行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一年目・二年目に計上していた予算を加えて、最終年度に次世代シーケンサーのデータ取得や人工進化実験の実施費用に利用する。
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Research Products
(9 results)