2016 Fiscal Year Research-status Report
動物細胞における複数人工遺伝子回路の組み合わせのシステム理論の確立と実践
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15KT0148
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鮎川 翔太郎 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (70645845)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木賀 大介 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30376587)
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Project Period (FY) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 人工遺伝子回路 / 合成生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、相互抑制系など、パラメタに微小な差異を持った種々の人工遺伝子回路を数理モデルに基づいて動物細胞内に組み合わせるためのシステム論を確立する。合成生物学では、生物実験結果とモデルの差異に基づいて、次サイクルの生物実験のためのDNA 配列を設計し、モデルを改良するというアプローチが取られている。こうしたアプローチを用いて大腸菌を始めとした微生物ではすでに多くの成果が得られており方法論もある程度確立されているが、動物細胞では実験系の複雑さからまだ難しいというのが現状である。そこで、本研究では、この方法論を動物細胞へと拡張する。その結果として、動物細胞を活用する合成生物学でこれまで不可能であった、細胞の多様化比率における数理モデルと実際の細胞の挙動との対応の精緻化を達成する。 平成28年度は、相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路にロバストな双安定性を持たせるため、転写抑制因子の協同性を高めるという設計変更を行う計画であった。先行研究で作製された相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路は、TALエフェクターを用いた人工転写抑制因子の組み合わせによる構造をもっている。この転写抑制因子の協同性を高めるために転写抑制因子が結合するDNA配列の数を増加させるという設計変更をしたが、実装が困難であることが予想された。そこで、TALエフェクターと同様に人工転写因子として用いられるCRIPSR-dCas9などを用いた人工遺伝子回路の設計変更を行った。また細胞実験と並行して、幹細胞の分化の事例を参考に数理モデルの改良も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路にロバストな双安定性を実現させるために、さらなる設計変更が必要になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
ロバストな双安定性を実現させるために、人工転写因子を変更した相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路を作製する。その後、相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路と大量発現回路を組み合わせて動物細胞の人工染色体に組み込み、細胞の多様化を達成させるための基本的な人工遺伝子回路を作製する。さらにパラメタが異なる種々の回路を作成し、細胞の多様化比率のプログラミングを行う。その後、細胞実験の結果と数理モデルを比較することで、細胞分化メカニズムの理解を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度は設計を変更して、ロバストな双安定性を持つ相互抑制ネットワークを持つ人工遺伝子回路を実装する計画であったが、十分な結果が得られなかった。これまでは先行研究で使用されていたTALエフェクターを利用した人工転写抑制因子の設計変更に重点を置いてきたが、TALエフェクター以外の人工転写抑制因子を用いる必要性が生じたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、CRSIPR-dCas9などTALエフェクター以外の人工転写因子を用いて、ロバストな双安定性を示す人工遺伝子回路の作製を行う。完成した人工遺伝子回路を組み合わせて人工染色体に組み込み、細胞の多様化を達成させる。さらに細胞実験の結果と数理モデルを比較することで、細胞分化メカニズムの理解を目指す。次年度使用額はこれらの実験に必要な予算である。
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