• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2016 Fiscal Year Research-status Report

膜とDNAが協同して増幅する人工細胞の構築

Research Project

Project/Area Number 15KT0153
Research InstitutionChuo University

Principal Investigator

鈴木 宏明  中央大学, 理工学部, 教授 (20372427)

Project Period (FY) 2015-07-10 – 2018-03-31
Keywords人工細胞 / ジャイアントリポソーム / 細胞分裂 / ゲノムDNA / 膜変形
Outline of Annual Research Achievements

現代の細胞では,多様な特殊化したタンパク質が複雑巧妙に働き細胞分裂が達成される.しかし,細胞の進化を考えると,地球上に細胞が出現した当初から複雑な機構を持ち得たとは考えにくい.細胞が増殖し得る最低限の要素とメカニズムを物理化学の観点から探る研究は,生命のシステムとは何かという問いに正面から挑むものである.原始細胞が増殖するためには,情報分子(核酸)の複製と膜構造の複製が同時に進行する必要がある.申請者らが発見した,脂質膜小胞が成長して自発的に分裂する効果(排除体積効果)は,小胞内に存在する高分子のサイズや濃度に依存して起こる.従って,小胞内でDNAが増幅し,より大きなDNAを内封するものが分裂・増殖し,生存に有利であったというシナリオが描ける.本研究では,DNAの等温増幅と膜の成長・分裂が協同して進行し,膜と核酸のみから構成される原始的な細胞モデルでも増殖可能であることを,実験的に示すことを目的とした.
平成28年度においては,申請当初に計画した内容の概要をほぼ達成することができ,予想以上の進展があった.具体的には,巨大DNAは低重量濃度でも排除体積効果による分裂様膜変形を起こすことを証明し,かつDNAの増幅反応を経たリポソームでも同様の分裂様変形を起こることを示した.以上により,原始的な膜分裂を誘起するには高分子の濃度のみならず分子サイズが重要であること,また,DNAはその目的に適した分子であることが示唆された.原始的な細胞において,より大きなゲノムDNAを合成することができたものは,分裂しやすく生存に有利であったことが示唆された.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

平成28年度は,①ジャイアントリポソーム内のゲノム増幅反応の条件検討と,②封入したゲノムサイズDNAによる膜分裂の成否の検討を行った.
①については,市販のphi29ファージ由来のDNAポリメラーゼ,およびテンプレートとなるゲノムサイズDNAおよび基質としてのNTPを,W/Oエマルション界面通過法で作製したジャイアントリポソーム内に封入し,30℃でインキュベーションすることでゲノムDNAが100倍以上に増幅する溶液組成を決定した.細胞を模擬したリポソーム内反応では,リポソームの内部でのみ反応が進行することが重要であり,膜内外の組成の検討が重要となる.高分子から小分子に至るまで成分と濃度を詳細に検討し,最適な条件を得ることができた.②については,以前より証明していたポリエチレングリコールの排除体積効果による分裂様膜変形が起こる条件について,ポリエチレングリコールの濃度と分子量依存性を詳細に検討した.その上で,ゲノムサイズの巨大DNAであるラムダファージ由来のDNA(およそ48kbp,ランダムコイルとしての回転半径が約0.5マイクロメートル)を0.1 ~1 mg/ml程度の濃度で封入して同様の実験を行った.その結果,ポリエチレングリコールに比べて濃度が100分の1程度であるにもかかわらず,分裂様の変形を確認することができた.この結果は,より巨大なゲノムを持つ細胞は,その濃度が低くとも,細胞分裂が起こりやすく,生存に有利であったことを示唆している.さらに,①で行ったゲノム増幅反応を経てリポソーム内DNA濃度が増加したリポソームにおいても,同様の分裂変形を確認することができた.DNAを超音波によるせん断で断片化した対照実験においては,分裂変形が起こらなかった.
以上の内容により,申請時に計画した内容をおよそ証明し,その基本的な条件を確立することに成功した.

Strategy for Future Research Activity

申請時に提案した仮説を原理的に証明することに成功したため,平成29年度は,熱力学的理論に基づいた定量的な検討を行っていく.上記の膜変形を促す排除体積効果は,高分子の浸透圧効果(束一的性質)に基づいている.これは系のマクロ的挙動が分子の化学的性質ではなく分子数に依存するというモデルであり,理想的な系であれば取り扱いが簡単である.しかし,高分子の束一的性質は非理想的でかつ非線形であり,実験との相互比較が重要である.具体的には,高分子の浸透圧計測により非線形性を定量的に確認し,実験で観察されている膜変形挙動の変化との関係性を検討する.高分子の束一性の非線形性はFlory-Hugginsの平均場理論およびビリアル展開により説明されるもので,この理論からも実験結果との整合性を確認する.実験で見られた現象を理論面からも検証し,原始的細胞の生存戦略の仮説を強固なものとする.

Causes of Carryover

研究補助を行っていただく人材が諸所の事情により本研究の内容にかかわらなくなったため,その分の残額が生じた.

Expenditure Plan for Carryover Budget

研究が予想以上の進捗を見せたため,論文および国際学会での発表を積極的に行う.そのための費用として利用する.

  • Research Products

    (10 results)

All 2017 2016

All Presentation (8 results) (of which Invited: 5 results) Book (2 results)

  • [Presentation] 人工細胞膜システムの細胞らしい挙動2017

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      生体界面研究会
    • Place of Presentation
      金沢
    • Year and Date
      2017-02-09 – 2017-02-10
    • Invited
  • [Presentation] 人工細胞膜システムの細胞らしい挙動2016

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      東京理科大学研究推進機構総合研究院 イメージングフロンティアセンターシンポジウム
    • Place of Presentation
      千葉
    • Year and Date
      2016-12-25 – 2016-12-25
    • Invited
  • [Presentation] 細胞の界面をつくる・制御する2016

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      日本表面化学会関東支部第5回セミナー 東京理科大学ウォーターフロンティアサイエンスシンポジウム
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2016-12-10 – 2016-12-10
    • Invited
  • [Presentation] リポソームを用いたサブピコリットル反応液への試薬供給2016

    • Author(s)
      岡野太治,鈴木宏明
    • Organizer
      第33回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム
    • Place of Presentation
      長崎
    • Year and Date
      2016-10-24 – 2016-10-26
  • [Presentation] ハイドロゲル内封ユニラメラリポソームの作製法の検討2016

    • Author(s)
      勝田翔太,岡野太治,鈴木宏明
    • Organizer
      第34回化学とマイクロナノシステム学会
    • Place of Presentation
      千葉
    • Year and Date
      2016-09-06 – 2016-09-07
  • [Presentation] 機械(メカ)屋からみた細胞~細胞はつくれるか?~2016

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      ナノ茶論
    • Place of Presentation
      神奈川
    • Year and Date
      2016-07-15 – 2016-07-15
    • Invited
  • [Presentation] 人工細胞系構築の試み2016

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      生体界面研究会
    • Place of Presentation
      愛知
    • Year and Date
      2016-07-04 – 2016-07-05
    • Invited
  • [Presentation] 分裂する人工細胞膜におけるゲノムDNAの分配機構2016

    • Author(s)
      鈴木宏明
    • Organizer
      第33回化学とマイクロナノシステム学会
    • Place of Presentation
      東京
    • Year and Date
      2016-04-25 – 2016-04-26
  • [Book] 少数性生物学(第10章 少数を分ける──細胞膜中の分子の離散性と分配)2017

    • Author(s)
      鈴木宏明(分担執筆)
    • Total Pages
      192
    • Publisher
      日本評論社
  • [Book] 人工細胞の創製とその応用(2.1 人工細胞の容器としてのリポソーム)2016

    • Author(s)
      岡野太治,鈴木宏明(分担執筆)
    • Total Pages
      215
    • Publisher
      シーエムシー出版

URL: 

Published: 2018-01-16  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi