2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉起源,地球起源反電子ニュートリノと太陽起源電子ニュートリノの高精度精密測定
Project/Area Number |
16002002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 厚人 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00100818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 邦雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10242166)
白井 淳平 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90171032)
末包 文彦 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10196678)
古賀 真之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90343029)
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Keywords | 原子炉反電子ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 太陽ニュートリノ / 液体シンチレーター / 放射性気体・重元素除去 |
Research Abstract |
データ解析の実績: 2005年7月、カムランドはこれまでに蓄積した749日分のデータを解析し、地球内部に存在するウランやトリウムの崩壊に伴って生成される地球反電子ニュートリノの初検出に成功した。ウランやトリウムの崩壊の際に発生する放射化熱は、地球形成期に蓄積された微惑星の衝突エネルギーの拡散熱とともに地球内部エネルギーの源泉であり、マントルやコアの対流などの地球内部運動や地球形成・進化を理解する上で、基本的な要素である。このため、地球反電子ニュートリノの検出はニュートリノを手段とする新しい研究分野、ニュートリノ地球科学を開拓するものである。地球反電子ニュートリノのエネルギー領域で検出された152個の反電子ニュートリノ候補の中から、原子炉反電子ニュートリノ事象や液体シンチレータ内の放射能に由来する擬似事象を差し引いた結果、計25個の地球反電子ニュートリノが検出された。この量は、地球物理学や地球化学の知識を総結集して構築された地球内部モデルから予測される19個とほぼ一致する。この結果はまだ精度的に十分ではないとはいえ、これまでの地球内部モデルの予測と矛盾しない。カムランドの今後のデータから、地球内部の放射化熱量やウラン/トリウム比の直接測定など、地球科学へ豊富な知見がもたらされる。さらに、地球上の数箇所にカムランド型検出器を設置することによって、ニュートリノによる地球内部構造の3次元探索が可能となり、ニュートリノ地球科学研究のさらなる展開が期待される。 実験技術の実績: (1)反応位置決定精度の向上させるための放射線源を先端に取り付けて液体シンチレータ内を3次元的に自由に移動する装置(4π較正装置)を完成させ、カムランド検出器内に挿入し動作試験を行い、系統誤差の改善のためのデータ収集を行った。 (2)液体シンチレータ中から、^<210>Pb等の放射性重元素を除去するための蒸留装置の基本仕様を作成し、装置の製作に取り掛かった。製作は1年以上を要することから、平成18年7月までに地下実験室に設置される。その後、1ケ月ほどの試運転を経て、いよいよ更なる放射性物質の除去作業を開始する。
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