2008 Fiscal Year Annual Research Report
2光子励起顕微鏡法を用いたシナプス・開口放出機構の研究
Project/Area Number |
16002012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河西 春郎 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授 (60224375)
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Keywords | 生物・生体工学 / シグナル伝達 / 生理学 / 糖尿病 / 脳・神経 |
Research Abstract |
大脳錐体細胞の樹状突起スパインの形態可塑性について研究を進め、本年度は特に次の進展を見た。成熟個体動物の大脳新皮質のシナプス可塑性を調べるために、ケイジドグルタミン酸試薬を脳表面から投与する方法の開発を進めてきた。同様な方法はまだ世界的に成功例がない。我々は、頭蓋骨と硬膜を除去後、脳表面からケイジドグルタミン酸を投与することにより、脳表面から200ミクロン程度であれば試薬が到達することを見出した。この試薬が2光子励起可能であることを示すために、2/3層の錐体細胞からホールセル記録をして、沢山のスパインの生えた樹状突起で、系統的なアンケイジングにより、グルタミン酸電流をマップした。これにより、グルタミン酸感受性はスパイン頭部に強く発現し、大きなスパインほど発現が強いことが確認された。これは、大脳新皮質においてもスパイン形態と機能の間には連関があり、機能変化に伴って形態変化をする可能性を示唆した。これはまた、個体脳においても単一スパインの刺激が可能であることを物語っている。そこで、スライス標本では長期増強を起こす条件で反復刺激を行ったところ3割ほどのスパインで長期的な頭部増大が観察された。長期増大の発生率が低いのは、無マグネシウム液を血液の流れる組織に還流することの難しさや麻酔の影響と考えられた。一方、長期抑圧を示す、低頻度長期反復刺激を与えると、9割以上のスパインで収縮、時に除去が観察されることを見出した。この抑圧はNMDA受容体の阻害剤で阻害された。この様に、海馬スライス標本におけるのと同様に、成熟動物新皮質においても、顕著な形態可塑性が誘発され得ることが始めて示された。
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