2004 Fiscal Year Annual Research Report
小児癌由来cDNAチップを用いた正常個体発生の遺伝子発現ネットワークの網羅的解析
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16012264
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
大平 美紀 千葉県がんセンター, 生化学研究部, 研究員 (20311384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 恵理子 千葉県がんセンター, 生化学研究部, 研究員 (40300917)
中川原 章 千葉県がんセンター, 研究局, 局長 (50117181)
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Keywords | 神経芽腫 / 肝芽腫 / 腎芽腫 / 個体発生 / DNAチップ |
Research Abstract |
本研究では、個体発生時の分化・増殖に関わる遺伝子発現ネットワークの解明を目的として、神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫などの胎児性腫瘍を材料に発生初期に発現する遺伝子の大量クローニングを行い、そのDNAチップを作製するとともに、このチップを用いて神経発生や肝発生に関わる遺伝子群の同定を行った。本年度は以下の成果が得られた。 (1)神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫由来の11,000個の独立遺伝子を搭載した小児癌チップを完成した。 (2)神経堤細胞から交感神経への正常な分化に関わる転写因子MASH1、MYCN、PHOX2A/2Bを2種類の神経芽腫細胞株で経時的に発現させ、小児癌チップを用いた遺伝子発現解析を行った。PHOX2A/2Bの過剰発現では、下流とされるRet、DBH、THの発現は変化せず、MASH1の発現が誘導された。すなわち神経芽腫では、PHOX2Aは細胞の分化シグナルではなく、MASH1の発現を継続的に高く維持することで交感神経細胞の未分化な増殖が促進していることが判明した。この他約200個の新規下流遺伝子候補を同定した。 (3)神経の分化増殖を担っているとされ、神経芽腫予後不良タイプで高頻度に増幅が見られるMYCNについては、発現制御を受ける新規遺伝子を4種類同定した。これら遺伝子の上流にMYCN結合配列も確認した。これらは神経芽腫サブセット間で発現が異なる遺伝子として既に同定していたものでもあった((4)参照)。 (4)小児癌チップを用いて、神経芽腫と肝芽腫の臨床サンプルの発現解析を行った。神経芽腫の予後の異なるサブセット間および肝芽腫と肝非癌部の間で発現量の異なる遺伝子をそれぞれ757種類、87種類同定した。これらは各腫瘍の良い予後マーカーとなるとともに、発生分化のネットワークにも関連していることを示唆するデータが得られた。神経芽腫については、これらの遺伝子の中から特に患者予後と強く相関する遺伝子を抽出し、予後診断用のチップを開発した。
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Research Products
(15 results)