2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16015213
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 敏夫 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90333830)
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Keywords | 神経科学 / 生理学 / 脳・神 / 情報工学 |
Research Abstract |
情動と記憶の関係を神経素子や神経回路レベルで研究するため、我々は脳スライス標本を用いた実験系を確立し、その研究を開始した。この標本は海馬周辺皮質と海馬に加えて、情動に深く関係する扁桃体を含み、互いの神経結合を保持している。これまでの研究で我々は、嗅周囲皮質が大脳皮質感覚野から情報を受け取り、それを嗅内皮質を介して海馬に送信する際に、嗅周囲皮質と嗅内皮質の境界(嗅周囲皮質のArea 35)がこの神経回路情報伝達においてゲート的役割を果たし、感覚情報のゲート通過には情動の座たる扁桃体からの嗅周囲皮質への入力が強力な調節作用を持つことを見出した。このような機構はラット脳の水平団スライスのうち、嗅内溝周辺に位置するものであった。本研究ではさらに対象を拡張しさらに腹側のスライス標本に含まれる神経回路について調べた。得られた結果を以下に要約する。 1)扁桃体、海馬、海馬周辺皮質の間の神経結合が実際に機能しているラット脳スライス標本を、嗅内溝より腹側部位から得ることができた。 2)ラット海馬腹側部は海馬周辺皮質を介して、または直接に扁桃体と強い神経結合を持つ。 3)感覚や情動といった異なるモダリティの情報が海馬周辺皮質へ入力される際、嗅内皮質においてその統合処理が行われていることが示唆された。 4)記憶形成時には海馬そのものに加えてその周辺皮質においても重要な情報処理がなされている可能性がある。 5)嗅内溝付近から得られる標本では感覚情報と情動情報の相互作用により海馬への情報入力が促進されるのに対し、嗅内溝より腹側部位から得られる標本においては、感覚情報と情動情報の相互作用は海馬への入力について抑制的であった。 6)海馬腹側領域では2つの異なるモダリティの情報の統合的処理において、全く相反する機能を有する神経回路が用意されていて、その機能発現には情報入力のタイミングが重要な要因となっている。
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Research Products
(4 results)