2004 Fiscal Year Annual Research Report
β-カテニンとそのパートナー分子ICATおよびRICSによる神経発生の制御機構
Project/Area Number |
16015232
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 勉 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (30302798)
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Keywords | β-カテニン / ICAT / RICS / Wnt / 領域特異化 / PSD / 成長円錐 / 脳高次機能 |
Research Abstract |
私たちは、β-カテニンと相互作用する新規タンパク質ICATおよびRICSを同定し、神経系の発生や機能発現におけるこれらの複合体形成の意義について解析を進めてきた。 ICAT欠損マウスの組織学的解析により、ICATが発生初期の神経板においてWntシグナルによる後方化を抑制することによって、前脳の領域特異化を制御していることを明らかにした。これを確認するため、ES細胞からの神経細胞誘導系を用いた解析を行った。その結果、ES細胞からの神経細胞誘導時に、Wnt3aが前方マーカの発現低下および後方マーカの発現上昇を誘導すること、これがICATによって阻害されることなどを見出した。さらに、ICAT欠損マウスより分離したES細胞からの神経細胞誘導系により、内在性ICATがWnt3aによる後方化を阻害することを見出した。これらの結果により、ICAT欠損マウスの解析で明らかになったICATの前方化作用をin vitroで確認した。 さらに、ES細胞からの神経細胞誘導の際に、Wnt3aにより発現が上昇しICATにより発現が低下する4種類の遺伝子を、DNAチップを用いて同定した。これらの遺伝子のプロモータ領域の解析により、Wntの直接の標的遺伝子であることを示した。 RICSはCdc42およびRac1に対するGAPで、PSDおよび成長円錐に局在する。PSDではβ-カテニンだけでなくN-カドヘリン、PSD-95、NMDA受容体と複合体を形成している。RICS欠損マウスの行動解析により、音に対する恐怖条件付けにおいて記憶能力が顕著に劣っていることを見出し、扁桃体依存性の記憶形成におけるRICSの関与が示唆された。また、RICS欠損マウス由来の初代培養ニューロンは神経突起の伸長活性が亢進していた。さらに、RICSの機能をより具体的に明らかにするため、β-カテニン以外にRICSと相互作用する分子の同定を試みた。その結果、軸索伸長や分枝形成に関与するタンパク質や、細胞内輸送に関与するタンパク質を新たに同定した。
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Research Products
(1 results)