2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16015290
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
花沢 明俊 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助教授 (10280588)
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Keywords | 神経生理学 / 大脳皮質 / 視覚 |
Research Abstract |
視覚神経系では、動き、色、形といった視覚属性が異なった経路で処理される並列分散型の情報処理が行われている。これら分割された情報から統一的な視覚認識に至るには、情報の再統合が必要である。情報統合には、視覚画像中のどの情報を認識のための統合に用い、どの情報を用いないかと言う、情報選択の問題が存在する。このような情報選択が顕著に表れるのは、人の顔にも杯にも見える「ルビンの杯」などの、複数の解釈が可能な多義図形においてである。一方(例えば顔)が知覚されるときには、もう一方(杯)は知覚されなくなる。このような現象に注目し、視覚認知の収束過程に関する普遍的なメカニズムの解明を試みた。 行動課題遂行中のマカクザルに視覚刺激を呈示し、大脳皮質から単一神経細胞の応答を記録した。複数の解釈が可能な多義図形の視覚刺激として、陰影から立体構造が知覚される刺激を用いた。通常、陰影からの立体構造知覚では、同一の画像に対して凹と凸の2種類の解釈が可能である。このような図形に視差による奥行き情報を付加することにより、凹凸の見え方を固定することができる。しかし、方向が正反対の陰影に対し、同じ視差を与えると、奥行きに関する陰影情報と視差情報が矛盾することになり、結果的に一方の陰影に対して与えた視差情報が無視され、もう一方の陰影に対して与えた視差情報のみが奥行き知覚に関与することになる。このような状況において、視差情報が視知覚に関与するか否かと、視覚刺激に対する細胞応答の相関関係を調べた。V4野の陰影および視差に応答する細胞において、その応答性と視差情報の知覚への関与との間には、顕著な相関は見られなかった。このことは、視覚情報の最終的な解釈およびそれにともなう情報選択は、より上位の領野で行われていることを示唆している。今後、更に上位の領野において記録実験を行う予定である。
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