2004 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚感覚インターフェースデバイスの開発と皮膚感覚情報処理の解明
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16016221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 裕之 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 助教授 (40226147)
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Keywords | 皮膚感覚インタフェース / 触覚ディスプレイ / 触覚センサ / バーチャルリアリティ / ハプティックス / テレタクション / 超音波放射圧 / マルチプリミティブ |
Research Abstract |
皮膚感覚の「センシング-伝送・記録-ディスプレイ」を可能とするシステムを実現し,皮膚感覚研究のプラットフォームを確立することを主な目標として研究を進めている. 本年度の中心課題の一つは,二次元通信の技術を用いて多数の触覚素子から信号を読み出す人工皮膚を試作することであった.二次元通信とは,伸縮可能な膜状の伝達媒体を2次元的に伝播する電磁エネルギーによって,膜内の任意点間で信号を伝達する新しい技術である.二次元通信層に接続された素子間には個別配線は存在せず,各通信素子は有限の伝達距離をもつ信号を発信し,動的に確立した通信経路によってパケットを連鎖的に伝達する.個別配線が存在しないため,様々な形態の柔軟膜に多数の機能素子を容易に実装できる.無線通信に比べるとはるかに少ない消費電力で高速に通信できる.これまで民間企業との共同研究によって,100MHzクロックで動作する通信素子が開発され,通信経路を自動的に生成するプロトコルについても,オーバーヘッドが極めて小さいパケット伝送の体系を確立することができている.本年度はこれらの通信素子に触覚の機能を持たせ,センシングと信号伝送の両方が可能である触覚素子を試作した.またこれを伸縮可能な柔軟シートに埋め込み,信号伝送が可能であることを確認した. もう一つの課題が,皮膚に高忠実度触感を再現する技術の開発である.本年度は,超音波の放射圧を用いた触覚ディスプレイを試作し,人間の皮膚の知覚特性を検証する実験を行なった.試作に用いた3MHzの超音波の波長は0.5mmであり,1mm径のスポットに収束させることは容易である.またその周波数は触覚の帯域である1kHzより十分に高く,1ms以下の時定数で圧力分布を制御することができる.このように本研究で開発している触覚ディスプレイは,皮膚表面上の圧力パターンを時間的にも空間的にも高い解像度で正確に制御することができるデバイスである.現時点では2gfまでを連続的に発生でき,力のスポットを1次元的に走査可能な装置の試作が終了している.さらに発生力を強化し,2次元圧力分布を制御可能なデバイスの開発を継続中である.装置開発を進める一方で,試作した1次元走査型のデバイスを用いた皮膚感覚の心理物理実験も開始されている.従来のデバイスでは困難であった実験によって,定説を覆す結論が得られている.
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Research Products
(6 results)