Research Abstract |
本研究は,研究代表者である山本が過去2年間に本領域で行ってきた研究と研究分担者の立木が行ってきた実数表現の理論を論理によって組合せることにより,データ表現の発展性を扱えるソフトウェア発展モデルを構築する.帰納推論の枠組みとしては,論理と帰納学習を連続的に接続する極限同定モデルを採用し,始祖学習とよぶ. 本年度は,実数値の計算を極限同定学習の立場から考察を行うことから始めた.極限同定学習では,(1)概念空間,(2)仮説空間,(3)訓練例の提示方法,(4)仮説生成アルゴリズム,(5)極限同定という設定を用い,さらに訓練例の提示方法として,例の無限列を仮説生成プログラムに与え続け,仮説生成プログラムはその時点までに受取った例の集合から仮説の無限列を出力し続ける,と設定する.このモデルを,「仮説生成プログラムは入力ストリームを介して例の無限列を受取り,出力ストリームを介して仮説の無限列を返す」と捉えることが,実数計算を帰納推論として解釈することに繋がると考え,実際に実数の符号付き2進表現を用いると,実数計算と帰納推論の対比を素直に実現することを示すことができた. 次に,立木が従来に行ってきた通常の2進表現ではない実数表現(グレイコード表現)について,論理と始祖学習への応用という視点から検討を行った.グレイコード表現では,高々1回の不定元の使用を認めるが,これを論理変数に対応させることが実数表現の論理化への鍵である.そこで,データとして変数を含む一階述語論理項に対する始祖学習を考察し,その実現手法を検討した. 一方,始祖学習自身の意味づけとして,論理と帰納的学習の連続的接続について,数学と統計学の接続と比較することを行った.そして,帰納的な推論における仮説候補の生成と選択に用いられる基準を嗜好性とよぶことにより,論理に限定せず,形式言語や帰納関数論などの記号的な手法を用いた帰納的学習において,記号論的な嗜好性がどのように用いられているかについて検討した.そして,帰納的学習における嗜好性が,統計的推定における尤度として機能していることを示した.
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