2005 Fiscal Year Annual Research Report
カオスに基づいたi.i.d.2値系列によるストリーム暗号システム
Project/Area Number |
16016269
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
香田 徹 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 教授 (20038102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大濱 靖匡 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 助教授 (20243892)
高橋 規一 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 助教授 (60284551)
實松 豊 九州大学, 大学院システム情報科学研究院, 助手 (60336063)
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Keywords | 擬似乱数生成 / 独立同分布 / カオス / 楕円関数 / 暗号強度評価 / 暗号文単独攻撃 / ストリーム暗号 / 画像の暗号伝送 |
Research Abstract |
従来,有限体理論に基づいた整数値の擬似乱数生成法が多用されている.一方,確率論ではコイン投げの数学的モデルであるi.i.d.(independent and identically distributed)2値系列が最も重要である.先に本研究代表者は,実数値系列に基づくi.i.d.2値系列生成法をカオス理論で明らかにし,i.i.d,2値系列が情報通信分野で必須の系列として有用であることを示した.本研究は,統計学・確率論基準の暗号強度評価法の確立を目的に遂行したものであり,その主要結果は以下の三点である.(1)i.i.d.2値系列を得るための十分条件を与え、それが可換な有理関数写像であるヤコビ楕円関数写像を含む広いクラスの1次元写像で生成される実数値系列の独立性判定にも適用可能であることを明らかにした.この結果は国際的に認知され,IEEEの会誌特集号の招待論文に纏められているので,IEEEの相当数の会員が知ることとなった.また,楕円暗号がWeierstrass型楕円関数とその微分間の代数的関係式である平面曲線で規定されることに鑑み,ヤコビ楕円関数とその微分,2階微分間を規定する(x,y,z)-空間曲線とその上の力学系及び各軸の1次元射影写像を定義した.その結果,三種類の射影写像は上記十分条件を満たすので,曲線上の実数値軌道ベクトルの2進展開は3次元i.i.d.2値ベクトル系列となることが明らかとなった.このことは,高精細なカラー画像用ストリーム暗号システムが容易に実現できることを示唆している.(2)ブロック暗号のDES(1ブロックからそれへの非線形写像をn段繰り返す.標準はn=16)の強度評価は暗号分野では古典的であるが基本テーマの一つである.偏りのある平文(偏りのあるi.i.d.2値系列も可)を入力するという前提だけの暗号文単独攻撃耐性基準のブロック暗号強度評価法を2種類与えた.これらは,標準DESの解読には,数十テラの英文Ascii平文と暗号文対を必要とする,従来の評価法とは全く異なる.具体的には,数メガの暗号文ビット間の入出力関係頻度表だけで4,6段DESでは全鍵が検出可能であるとの結果を得た.(3)米国の研究グループ提案のElgamal型公開鍵システムを模倣した可換多項式で生成された実数値カオス系列に基づくシステムの公開鍵は秘密鍵を露呈していることをカオス理論により示した.上記研究成果から明らかなように,カオス理論に基づく暗号強度評価法の研究は国策上今後も是非遂行されるべきである。
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