2004 Fiscal Year Annual Research Report
H.pylori CagA蛋白による細胞内シグナル伝達制御機構の攪乱
Project/Area Number |
16017201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東 秀明 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (20311227)
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Keywords | 感染症 / 癌 / シグナル伝達 / 微生物 / ヘリコバクター・ピロリ |
Research Abstract |
・cagA陽性H.pylori菌が感染した細胞内では、注入されたCagAがチロシンリン酸化を受けるとともに細胞膜に局在する。一方我々は、CagAがチロシンリン酸化依存的にSHP-2活性を亢進することに加え、活性型SHP-2を細胞膜に移行させることにより細胞形態変化を誘導することを以前報告した。このことからCagA膜移行は、CagAが生物活性を示す上で重要な要素となっていることが予想された。そこで、種々の変異型cagA遺伝子を用い細胞膜移行能に関わるCagAの分子内領域を検討した。その結果、CagAはチロシンリン酸化部位を含むGlu-Pro-Ile-Tyr-Ala(EPIYA)配列依存的に膜へ移行することが明らかとなった。一方、リン酸化部位のTyrをPheに置換したリン酸化耐性型CagAもまた細胞膜への局在を示すことから、CagA膜移行活性はEPIYA配列のリン酸化非依存的な機能であることが明らかとなった。 ・CagA-SHP-2複合体により脱リン酸化される下流シグナル伝達分子の探索を行った。その結果、CagAを発現しているAGS細胞において、細胞接着に深く関わるチロシンキナーゼFAKのチロシンリン酸化レベルが低下していた。変異型SHP-2およびFAK分子を用いた解析から、SHP-2はFAKを基質分子として直接認識し、FAK活性化に必要であるリン酸化チロシンを脱リン酸化することでFAK活性化を抑制していた。また、優性陰性型FAKにより内因性FAK活性を抑制したところ、CagAにより誘導される細胞形態と酷似した細胞形態が誘導され、CagAはSHP-2活性化を介してFAK活性を抑制することにより、細胞形態変化を誘導していることが明らかとなった。 以上に加え、胃上皮におけるCagAの発癌作用およびその発症機構を解明するため、CagAトランスジェニックマウスを作成中である。
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Research Products
(8 results)