2004 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスにおけるHA蛋白への糖鎖付加による免疫回避機構の解明
Project/Area Number |
16017214
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
高下 恵美 山形大学, 医学部, 助手 (30361249)
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Keywords | インフルエンザウイルス / HA / 糖鎖 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスでは、宿主免疫からの回避に主要抗原であるHA蛋白球状部の糖鎖の数と分布が大きな影響を与える可能性がある。この可能性を検証するのが本研究の目的である。インフルエンザA/H3N2ウイルスは、1968年の出現当時にはHAの球状部に2本の糖鎖をもつにすぎなかったが、1975年には3本に、1986年には4本にその数を増やしており、1997年の分離株は6本の糖鎖をもつに至っている。そこで、本研究では1968年の出現当時に分離されたウイルスのHAを鋳型にして分離株と同じ位置に新たに糖鎖付加部位を導入し、HAの生物活性と抗原性に及ぼす糖鎖付加の影響を検討した。 本年度は、1968年に分離されたA/Aichi/2/68株のHAを鋳型にして新たに糖鎖付加部位を導入し、1975年(A/Victoria/3/75)、1986年(A/Memphis/6/86)、1997年(A/Sydney/5/97)分離株と同じ位置に1〜6本の糖鎖をもつ7種類の変異HAを単独発現させた。変異HAの細胞内輸送能、レセプター結合能及び膜融合能を野生型HAと比較した結果、すべての変異HAは野生型HAと同様に細胞表面に輸送されていた。また、3〜6本の糖鎖をもつ変異HAはレセプター結合能が低下していたが、膜融合能は野生型HAと同程度に維持されていた。 A/Aichi/2/68株に対する抗HAモノクローナル抗体と各変異HAとの反応性を調べた結果、4〜6本の糖鎖をもつ変異HAはすべてのモノクローナル抗体との反応性が著しく低下していた。さらに、1976年に採取したヒト血清との反応性も低下していた。 以上の結果から、A/H3N2ウイルスはHA蛋白球状部への糖鎖付加により、生物活性に致命的な影響を与えることなく、抗原性を変化させることによって、効率よく免疫から回避している可能性が示唆された。
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