2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16017221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
俣野 哲朗 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00270653)
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Keywords | エイズワクチン / 細胞傷害性Tリンパ球(CTL) / 慢性感染症 / HIV / サル免疫不全ウイルス(SIV) / センダイウイルス / 主要組織適合性抗原(MHC) / エスケープ変異 |
Research Abstract |
HIV感染症では、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)等の適応免疫反応の誘導にもかかわらず慢性持続感染が成立することが重大な特徴である。本研究は、ワクチン誘導CTLの慢性持続感染抑制効果を知る目的で、サル免疫不全ウイルス(SIV)感染サル慢性エイズモデルにおける解析を行うこととした。昨年度のワクチン接種サルへのSIVチャレンジ実験にて、SIV複製制御が認められたサルでは、早期に野生型SIVが排除され、あるCTLエスケープ変異が選択されること、さらにその変異SIVもその後制御されることが明らかとなった。今年度は、このCTLエスケープ変異SIVの個体レベルでの複製能の解析を行った。まず、SIV複製制御が認められたワクチン接種サルのうちMHCハプロタイプ90-120-Iaを共有する3頭に共通に認められたGag206-216エピトープ特異的CTLに対するエスケープ変異(Gag L216->S)を有するSIV分子クローンDNAを作成した。サル2頭への野生型と変異型の両者のDNA接種競合実験では、2週目には野生型が優位となった。一方、サル2頭への変異型SIV DNAのみの接種実験では、慢性持続感染が成立し、約2ヶ月の時点で野生型が出現し優位となった。したがって、このCTLエスケープ変異SIVの複製能は野生型より劣っていることが示され、観察されたSIV複製制御における野生型SIVの早期排除には、強い選択圧を有するGag206-216特異的CTLが中心的役割を果たしたことが明らかとなった。さらに、変異型のみの接種実験で慢性持続感染が成立したことから、この変異SIVの複製制御についてはGag206-216特異的CTL以外の適応免疫反応の関与が示唆された。なお、本実験は、個体レベルで、quasi-speciesからの選択ではなく分子クローンからの復帰変異が起こりうることを初めて示すものである。
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Research Products
(4 results)