2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16017232
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
渡辺 守 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10175127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 哲也 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (70265809)
八木田 秀雄 順天堂大学, 医学部, 助教授 (30182306)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / 再生医療 / transdifferentiation / 杯細胞分化 / Interferon Regulatory Factor (IRF) / IL-7 / Notchシグナル / Wntシグナル |
Research Abstract |
本研究は、申請者らが独自に見いだした腸管粘膜免疫調節機構ならびに腸上皮細胞の分化・再生機構の特殊性の理解に基づいて、慢性大腸炎に対する新規治療法の開発を目指すものである。本年度も、当初の研究計画に基づく一定の成果が下記のごとく挙げられた。我々は骨髄細胞が腸管上皮へ分化しうること、またこの機構は傷害後の腸管上皮再生をレスキューすることを世界に先駆けて報告し、大きな注目を集めることとなった。本年度はこれをさらに発展させ、a)骨髄細胞が、腸管上皮細胞の分化形質を獲得して機能すること、b)骨髄細胞は未熟な上皮細胞としても生着し上皮修復に積極的に関わること、さらに、c)腸管上皮の細胞系列のうち、これら骨髄由来細胞は特に分泌型細胞(杯細胞、神経内分泌細胞など)への分化傾向を有すること、などを報告した。これら成績は、慢性炎症による障害後上皮再生に特異的分化制御が機能することを示唆し、今後の上皮再生医療、中でも分化系列特異的再生誘導療法につながるものと期待される。実際我々は既にNotchおよびWntシグナルによる腸上皮細胞分化に関しいくつかの新知見を得、さらなる解析を継続中である。腸管上皮細胞の解析により、a)IL-7産生には転写因子IRF-1/IRF-2による転写制御が重要であること、b)IRF-1/IRF-2の両者がIL-7産生を正に制御するのみならず、IRF-2は構成的、一方IRF-1は刺激依存性の各々独立したIL-7誘導因子であること、さらにc)ヒト大腸組織にIRF-1/IRF-2蛋白が発現し、中でもIRF-1が杯細胞に局在し発現することを明らかにし、ヒトにおけるIL-7分泌の調節機構を初めて報告した。これらの成績はIRF蛋白機能を人為的に制御することで腸管上皮によるIL-7産生を調節し、ひいては慢性大腸炎制御が可能であることを示すものと考えられた。また、腸管上皮におけるIRF-1標的遺伝子の同定を行い、これまでに知られていない標的遺伝子群を明らかにするなど、腸管上皮細胞分化とこれによる免疫機能の相関についての解析を継続中である。
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