Research Abstract |
我々は高圧NMRを用い,プリオン中間体の構造を残基レベルで特徴づけることに成功し,プリオン中間体を発見した。病気を引き起こすプリオンの変異部位は詳細に調べられており,主にヘリックスB, Cに集中しているが,プリオン中間体(PrP^*)においても,ヘリックスB, Cに部分的な変性が見られる。特に,N端のβシート部分と接触している部分の安定性が低いことが分かった。このことは,これらのプリオン中間体が,スクレイピー型(PrP^<Sc>)への変換過程と関わっている可能性を強く示唆している。 NMR実験より,一見独立に振舞っているかに見えるN端の疎水性クラスターとC端ヘリックスとが,構造的に干渉し合っていることが分かってきた。N端部分がアポトーシスを誘導するオリゴマーを形成するとすれば,C端ヘリックスは感染性に関与していると考えられる プリオン中間体(PrP^*)の観測から,PrP^<Sc>は,変性型(PrP^u)からではなく,むしろPrP^*から生成される可能性がある。PrP^<Sc>の構造は未だ不明であるが,PrP^cの立体構造を基にして,PrP^*層への立体構造変換を選択的に抑制する薬剤をデザインすることは可能であろう。このような薬物は,PrP^cの遅い構造揺らぎを抑制し,PrP^cを安定化し,PrP^*のポピュレーションを減少させる。その結果としてPrP^<Sc>の生成を抑制する。我々は,この原理をタンパク質のダイナミクスに基づく創薬(DBDD)と名づけた。現在,300万種類の化合物の中から,上記情報も組みいれて,In Silicoで大幅に可能性を絞り,Ex Vivoでスクリーニングを行った。このような方法で,かなり強力な抗プリオン作用を有する物質が,現在,見つかりつつある。
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