2005 Fiscal Year Annual Research Report
感染型食中毒菌による感染症と主要病原因子(毒素)遺伝子発現の開係
Project/Area Number |
16017246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西渕 光昭 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (50189304)
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Keywords | ベロ毒素 / 腸管出血性大腸菌 / 大腸菌O157 / 志賀毒素 / 転写 / プロモーター / mRNA |
Research Abstract |
腸炎ビブリオと腸管出血性大腸菌O157の毒素遺伝子発現レベルに関する研究のうち、本年度は主として腸管出血性大腸菌O157(以下本菌と記載)に関する成果を得た。 1.本菌が保有する主たる病原遺伝子である志賀毒素遺伝子(stx1遺伝子、stx2遺伝子)のmRNAをTRC法により迅速かつ簡便に定量検出するためのシステムを確立した。stx1およびstx2特異的mRNA(標準RNAの初期コピー数:100)をいずれも反応時間20分以内に検出できた。初期コピー数が100〜107の範囲で検出時間はコピー数に比例していた。EDL933株では検出感度は菌数100個程度であった。さらに本菌の代表菌株および他の腸管病原性細菌種を用いて検出系の特異性を確認した。 2.日本およびタイで分離した大腸菌O157:H7/-の中に、stx2遺伝子(志賀毒素遺伝子のタイプ2)を保有するが、抗体法(reversed passive latex agglutination[RPLA]法)によりStx2が検出できない菌株が存在する。本研究では、このような菌株でStx2産生が確認できない理由を明らかにした。まず、抗原性が変化して、そのためにStx2が検出できない可能性は否定された。stx2プロモーター配列中に2塩基の相異があり、このプロモーターが機能していないと考えられた。また、上流にあるより強力なプロモーター発現に関与するq遺伝子(抗転写終結因子をコード)は、典型的な大腸菌O157:H7の保有するq遺伝子との相同性が低かった。むしろバクテリオファージΦ21のq遺伝子と相同性が非常に高かった。解析の結果、Thai-12株のQタンパク質は抗転写終結因子としての機能が低下し、これがstx2遺伝子発現低下の一因であることが示唆された。さらにstx2ファージの増殖が認められず、これもStx2産生が低下する要因であることが明らかになった。
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Research Products
(5 results)