2004 Fiscal Year Annual Research Report
HIV-1の吸着侵入機構としてのmultiple-site bindingの証明
Project/Area Number |
16017285
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
原田 信志 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (60173085)
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Keywords | ウイルス / 感染症 / エイズ / 細胞膜 / レセプター / 膜流動性 / ウイルス吸着 |
Research Abstract |
HIV-1が持続感染したMOLT-4細胞とHIV-1粒子を5-doxyl stearic acidでラベルし、電子スピン共鳴法で、それぞれの細胞膜とウイルスエンベロープの流動性を測定した。ウイルスエンベロープの流動性は細胞膜の流動性に比べ低かった。また、エンベロープのコレステロール含量は細胞膜に比べると高かった。温度、脂質、局所麻酔剤などを作用させ、細胞膜の流動性とHIV-1感染性との関連を調べた。約5%の流動性の低下でHIV-1の感染は56%抑制され、5%の流動性の増加で2.5倍の感染増幅が認められた。細胞へのウイルス吸着を室温で行い、その後40℃の高温処理と局所麻酔剤キシロカイン処理を1時間行った。その結果、膜流動性の亢進による吸着後感染増強post-attachment enhancement(PAE)が観察され、このPAEは抗CXCR4ペプチドであるT140で阻止された。5-doxyl stearic acidを用いた電子スピン共鳴法で、HIV-1が持続感染した生細胞の膜流動性とHIV-1粒子のエンベロープの流動性を正確に測定できた。 ウイルスエンベロープの流動性は、そのウイルスが出芽して来た細胞の膜流動性より低く、これはエンベロープのコレステロール含量が高いためであった。HIV-1が選択的に細胞膜のraftから出芽していることを示している。細胞膜およびエンベロープの流動性の微細な変化は、指数関数的にHIV-1の感染に影響を与えた。この事は、ウイルスがmulti-hitで感染する現象と似ており、流動性亢進により複数のレセプター結合が感染成立に必要なことを示唆していると思われた。PAEは細胞膜とエンベロープの流動性の亢進によって起こる現象である。このPAEがHIV-1のcoreceptorであるCXCR4のアンタゴニストT140で阻止されるのは、室温で緩やかに附着したHIV-1のmultiple-site binding(MSB)形成が阻害されたためと考えられた。従って、膜流動性亢進はMSB形成を促進する。今後、細胞膜やウイルスエンベロープの流動性を抑制する因子を探し求め、エンベロープを有する広範囲なウイルスに適応できる抗ウイルス剤の開発を行う。
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