Research Abstract |
我々はこれまでに,ヒトコロナウイルス-229E(HCoV-229E)は,細胞に吸着後,レセプターであるCD13を架橋し,カベオラへ移動することを明らかにしてきた.今年度は,HCoV-229Eがカベオラから細胞内へ侵入する可能性について検討した. ラフト,カベオラの機能を阻害した場合のウイルス局在を追跡するために,膜コレステロール枯渇処理を施した細胞において感染実験を行った.あらかじめ細胞にコレステロール結合試薬であるmethyl β-cyclodextrin(MeβCD)を作用させ,ウイルスとインキュベーションすると,ウイルスとカベオリン-1の局在が一致する細胞数は有意に減少した.また,MeβCD処理後,コレステロールを付加すると,両者の局在が一致する細胞数は回復した. 膜コレステロール枯渇処理がHCoV-229Eの細胞内エントリーに与える影響を検討した.ウイルスを細胞に吸着させ,37℃,3.5時間培養後,トリプシン処理にて細胞表面のウイルスを除き,細胞内のウイルス量をRT-PCR法を用いて定量した.MeβCDで前処置した細胞では,細胞内ウイルス量は減少した.MeβCD処理の後,コレステロール付加を行った細胞では,細胞内ウイルス量は回復した. カベオラ形成を抑制した細胞におけるHCoV-229E感染効率を検討するため,カベオリン-1をノックダウンした細胞を作製し,感染実験を行った.細胞にカベオリン-1 siRNAを導入し,ウイルスを吸着させ,37℃,48時間培養後,蛍光抗体法によりウイルス感染細胞数を定量した.カベオリン-1の発現量が減るに従って,ウイルス感染が抑制されることがわかった. 以上の結果から,HCoV-229Eは細胞内侵入において,カベオラを経由していることが示唆された.
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