2004 Fiscal Year Annual Research Report
SARSおよび動物コロナウイルスの増殖と遺伝子発現に関する研究
Project/Area Number |
16017308
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
田口 文広 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 室長 (30107429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 州徳 国立感染症研究所, ウイルス第3部, 研究官
森川 茂 国立感染症研究所, ウイルス第1部, 室長 (00167686)
水谷 哲也 国立感染症研究所, ウイルス第1部, 主任研究官 (70281681)
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Keywords | コロナウイルス / SARS-CoV / S蛋白 / プロテアーゼ / レセプター / エンドゾーム |
Research Abstract |
SARS-CoVはエンベロープを持つRNAウイルスで、粒子表面のスパイク(S)蛋白と細胞表面のレセプターACE2が結合後、ウイルスエンベロープと細胞の膜融合により標的細胞へ侵入すると考えられている。最近Bates等は、200kDのS蛋白がトリプシンにより解裂して100kDになると膜融合が誘導されること、またSARS-CoVはエンドソームを経由して侵入すること、S蛋白の解裂活性化はエンドソーム内で起こっている可能性があることを示した。これまでエンドソーム内でのプロテアーゼによるエンベロープ蛋白の解裂活性化は知られておらず、我々はこの新しいメカニズムを解析するために、SARS-CoV感染VERO E6細胞を用いて、トリプシンおよび他のプロテアーゼに対する感受性を調べた。SARS-CoV VERO E6細胞に感染させ、S蛋白を細胞表面に発現させ、種々のプロテアーゼで細胞表面を5分間処理し、誘導される細胞融合を顕微鏡で観察した。またプロテアーゼによるS蛋白解裂は、S蛋白の1124-1140アミノ酸配列を認識する抗体を用いたウエスタンブロットで行った。trypsin、thermolysin、dispaseで処理した感染細胞では、30分から1時間後に強い細胞融合が認められ、200kDのS蛋白は100kDに解裂しており、これは抗体の認識部位から膜貫通S2サブユニットと推定された。chymotrypsin、papain、proteinase-K処理では細胞融合は弱く、S蛋白の200kD及び100kDの両バンドは消失した。collagenaseでは細胞融合は全く起こらずS蛋白の解裂も見られなかった。プロテアーゼ処理後に残存する100kDのS2の存在と膜融合活性の発現が並行することから、S蛋白の活性化には、S蛋白の解裂と、S2が分解されずに残ることが必要であると推測できる。今後、プロテアーゼがS蛋白にどのような構造変化を起こさせ、その変化が脂質二重膜にどう作用するのか、またエンドゾームの酸性条件下でも同様の変化が起るのか等を明らかにしたい。
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Research Products
(6 results)