2004 Fiscal Year Annual Research Report
ポリオウイルスの運動神経細胞での増殖制御機構の解明
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16017315
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
小池 智 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (30195630)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 琢也 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (90146027)
多屋 長治 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (90175456)
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Keywords | ポリオウイルス / 運動神経細胞 / I型インターフェロン / 神経選択的病原性 / I型インターフェロンレセプターノックアウトマウス |
Research Abstract |
急性灰白髄炎の原因ウイルスであるポリオウイルス(PV)は神経指向性を持つ.経口感染によりヒトの体内にはいったPVは脊髄や脳幹の神経細胞で増殖、破壊することにより四肢のマヒなどに至る.しかし非神経組織ではウイルスが到達しても顕著な病変を生ずることがない.このような神経系に選択的な病原性はウイルスの吸着、侵入のレベルやウイルス遺伝子の発現レベルで制御されていると考えられてきたが、ポリオウイルスレセプター(PVR)やその他の宿主因子が同定されてみるとこれらは非標的組織でも広く発現が認められ、「複製に必須の宿主因子が揃っている組織が標的になる」という考え方では説明できないことが分かってきた. 我々はヒトPVR遺伝子を発現するトランスジェニック(tg)マウスモデルを用いて組織特異性の解明を目指してきた.新たに自然免疫によるウイルス複製の阻害を考慮にいれる必要があると発想を転換し、I型IFN応答と特異性の関係をマウスモデルで調べた.まずIFNα/βレセプターをノックアウトしたPVR-tgマウスでは標的とならないはずの肝臓、脾臓、膵臓などの組織でもウイルスが効率良く増殖し、病変を生じた.すなわちPVは潜在的に増殖可能であるがIFN応答によって抑制されていたと考えられた.次に、正常なIFN応答をもつPVR-tgマウスのIFN応答を調べた.するとマウス個体においては非神経組織ではウイルス感染前から2',5'-OAS, PKR, RIG-Iなどの発現レベルが比較的高く保たれており、ウイルス感染に際し速やかで強いIFN応答が可能であった.逆に神経組織においてはウイルス感染前からこれらの遺伝子の発現レベルが低く、ウイルス感染直後に速やかで十分なIFN応答ができない.このようにPV感染の組織特異性はIFN応答が組織によって不均一であるために生じていることが判明した.
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