2004 Fiscal Year Annual Research Report
培養神経細胞でプリオン蛋白質による発現制御される遺伝子群のマイクロアレイ解析
Project/Area Number |
16017320
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
佐藤 準一 国立精神・神経センター, 免疫研究部, 室長 (30274591)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 隆 国立精神・神経センター, 疾病研究第六部, 部長 (90231670)
|
Keywords | プリオン蛋白質 / マイクロアレイ / プロテオミクス / 遺伝子導入 / 神経細胞変性 / クロイツフェルトヤコブ病 / 14-3-3蛋白質 / 熱ショック蛋白質 |
Research Abstract |
[目的]正常プリオン蛋白質(PrPC)の生物学的機能は明らかではない。プリオン病ではPrPCとアミノ酸配列は同一で高次構造が異なる異常プリオン蛋白質(PrPSC)が脳に蓄積して神経細胞死を認める。PrPC遺伝子ノックアウトマウスでは海馬神経細胞シナプス機能障害・小脳Purkinje細胞死を認め、PrPCは神経細胞の生存や機能遂行に重要な役割を果していることが示唆されている。またPrPCが細胞内に蓄積すると神経細胞死を来すことが報告されている。しかし現在までヒト神経細胞におけるPrPCの生物学的機能は十分解明されていない。PrPCは細胞膜cavolae-like domain(CLD)でPrPSCに構造転換される。我々はPrPCは神経細胞機能維持シグナル伝達系遺伝子群の発現を制御し、PrPSC感染によるPrPC発現異常はこれらの遺伝子群の制御異常をもたらし神経細胞死を惹起するとの仮説を考案した。本研究ではこの仮説を検証するために、PrP遺伝子を強制発現させた培養細胞における遺伝子発現プロフィールをマイクロアレイで包括的に解析し、PrPC発現上昇に連動して変動する遺伝子の同定を試みた。すなわちFlp-In systemを用いてHEK293細胞親株(F1)からPrPC高発現安定細胞株(P1)を樹立し、両者の遺伝子発現プロフィールを12,814 cDNA microarray(Agilent)で比較解析した。[結果・考察]P1 vs F1間で33遺伝子の発現差異(3倍以上上昇or0.3倍以下低下)を認めた。14遺伝子は神経細胞・グリア細胞発生・分化・変性関連遺伝子、6遺伝子は細胞外マトリックス産生関連遺伝子、2遺伝子は補体関連遺伝子であった。P1では小脳変性症関連遺伝子:spinocerebellar ataxia(SCA12)責任遺伝子PPP2R2Bとparaneoplastic cerebellar degenerationターゲット遺伝子CDR34の発現上昇を認めた。PrPCの恒常的高発現はCLDに集積するシグナル伝達因子に対して物理的障壁なり、多彩な遺伝子の発現制御に影響して神経細胞変性を惹起し得ると考えられた。一方ヒト神経前駆細胞でプラスミドベクターにクローニングしたPrP遺伝子やコントロール遺伝子(CAT)を強制発現させると、interferon-responsive genes ; IFIT1,G1P2,MX1,OAS1,PRKR, ISGF3Gの発現を誘導することを見い出した。Creutzfeldt-Jakob病では髄液中に14-3-3蛋白質を検出し、診断特異的マーカーとされている。2D PAGE protein overlay法とmass spectrometryにより、ヒト神経細胞における14-3-3 zeta isoform結合蛋白として60-kDa heat shock protein(HSP60)とPrPCを同定した。この結果は14-3-3,PrPC, HSP60の3者は神経細胞内でmolecular complexを形成している可能性を示唆する。
|
Research Products
(6 results)