2004 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本黎明期における薩摩藩集成館事業の諸技術とその位置付けに関する総合的研究
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16018216
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
長谷川 雅康 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (00253857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
門 久義 鹿児島大学, 工学部, 教授 (40047634)
田辺 征一 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (10026130)
渡辺 芳郎 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (10210965)
上野 正実 琉球大学, 農学部, 教授 (50145546)
池森 寛 西日本工業大学, 工学部, 教授 (70148857)
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Keywords | 集成館事業 / 鹿児島紡績所 / 薩摩の熔鉱炉 / 綿繰機 / 薩州鹿児島見取絵図 / 磯窯 / 白糖製造 |
Research Abstract |
前期の薩摩藩集成館事業における5技術分野に加え、熔鉱炉・磯窯(薩摩焼)・製糖技術の分野を研究している。判明した主な結果の概要を記す。 (1)反射炉;シンポジウムで佐賀・萩・鹿児島の反射炉と薩摩の熔鉱炉の報告を基に、3地域間の技術移転の具体像を議論した。 (2)建築;唯一現存する鹿児島紡績所使用の鉄柱を実測し、紡績所の鉄柱を復元した結果、全長は4314mmで、柱脚とそこから伸びた円柱、四葉型に開いた板とそれを支える添え板よりなる柱頭を持つ形状となった。柱頭側面の平滑面は動力伝達用のシャフトを支えるシャフトハンガー取り付け用と見られる。 (3)紡績技術;鍋島報效会所蔵の『薩州見取絵図』などに描かれた綿繰機の絵図を詳細に検討し、綿繰機を復元した。現在、広幅織機の復元のための準備作業中。 (4)熔鉱炉;過去2回発掘調査を実施した。主な検出遺構は、石垣列、石組み遺構、突き固め遺構(仮称)が発見され、出土遺物、幕末〜近代の陶磁器・瓦・レンガ・耐火レンガ、鉄滓,石製鋳型など。また、ヒュゲーニン著『ロイク王立鉄製大砲鋳砲所における鋳造法』1826年の熔鉱炉図の由来について引用文献のハッセンフラッツ著『鉄冶金学』1812年を調査し、形状のかなり似た図面を発見。 (5)磯窯(薩摩焼き):集成館事業の中で開窯された磯窯は、薩摩焼の陶工が関与し、反射炉用の耐火レンガを焼成した。その窯構造は『薩州鹿児島見取絵図』により、燃焼室+10〜11室の連房式登窯であり、その規模は同時期の薩摩焼の窯としては、最大規模のもの。基礎を石垣で構築するなど多大な労力が費やされており、きわめて産業志向の強い窯であった。反射炉建設に在来の窯業技術が深く関係していた。 (6)製糖:薩摩藩が1858年に技術者を奄美大島に派遣し、4カ所に白糖製造工場を設置した。工場跡地からの煉瓦が5種類保存され、その内"COWEN"の刻印のものは、19世紀の英国Joseph Cowenの会社製の可能性が高い。4設置位置は特定でき、4ヵ所に共通する立地条件も明らかになった。
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Research Products
(3 results)