2004 Fiscal Year Annual Research Report
写実から可動へ-自在置物の歴史およびその構造の復元的研究
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16018230
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
原田 一敏 独立行政法人国立博物館東京国立博物館, 文化財部, 上席研究員 (20141989)
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Keywords | 自在 / 置物 / 可動 / 甲冑師 / 明珍 |
Research Abstract |
本研究は、自在置物が、いかにして動かすことが出来るかを理解するための復元と、その歴史の探求にある。 復元的研究については,本年度、海老置物について、明治時代以来この種の置物を作っている工人の家に生まれた京都在住の冨木章氏に、その1匹分の部品の制作を依頼し、完成品を受け取り、東京国立博物館で保管している。これによって、伊勢海老に関しては、その制作法が明らかとなった。今後は鍛、彫金の専門家であれば、だれでも同一の伊勢海老を作ることが可能となり、技術の伝承を行うことができた。 また、歴史については、京都の三年坂美術館所蔵品(鷹、鯉、蛇、伊勢海老、手長海老、蝉、クワガタ、カブト虫、蜂)、東京の蛭田氏、藤沢氏、岡田氏、渡辺氏所蔵の伊勢海老、手長海老などを調査した。また米国のニューヨークでは、メトロポリタン美術館、フライングクレインアンティーク、オリエンテーションギャラリーの所蔵する、龍、伊勢海老、手長海老、鯉、鵜、カマキリ、蝉、トンボなどを調査した。またボストンでは、ボストン美術館で龍、伊勢海老、ボストン郊外のヒギンス・アーマリー博物館では、龍、蛇、ヤドカリ、バッタはじめ、総数で30点の自在置物を調査した。これらの調査では、ボストン美術館の龍は210センチもあるこの種の置物では最大なもので、これが明治時代の制作であることがわかった。このほかにも明治時代の作者として宗一、豊洗堂いった今までに見たことがなかった工人の作品も知ることが出来た。江戸時代には明珍派の甲冑師がこの置物を多く作っていたが、ヤドカリ、鵜などこれまでに知られていなかった作品も発見することが出来た。
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