2004 Fiscal Year Annual Research Report
生体防御・修復に関わる蛋白分解酵素阻害物質SLPIの化学発癌発生関与の機能解析
Project/Area Number |
16021201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
貫和 敏博 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (40129036)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 拓児 東北大学, 病院・助手 (80344670)
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Keywords | 癌 / 発がん / 生体防御 / 蛋白分解酵素阻害物質 / SLPI |
Research Abstract |
1.SLPIと肺癌 ヒト手術摘出肺癌組織の検索で非小細胞癌において、SLPIは約75%に発現していることを見出し、生体内で肺癌組織特異的な指標であると同時に腫瘍選択的な治療に役立つ可能性を秘めている。そこで複製可能なアデノウイルスを用いた遺伝子治療における肺癌特異的発現を狙い、SLPIプロモーターを利用したところ、NK4アデノウイルスと二重感染する系で効率の良い遺伝子治療系を確立できた(Maemondo et al. Cancer Res. 64.4611.2004)。マウスSLPI染色体遺伝子については、クローニング・染色体局在・発現機能解析は既に報告しており、ターゲットベクターを構築し、SLPI遺伝子欠損マウスの作成に成功した。本遺伝子欠損マウスの解析から、エンドトキシンショックにおけるSLPIの役割について新たな自然免疫における役割を報告した(J Exp Med. 197.669.2003)。このSLPI遺伝子欠損マウスを用い、以下に肺発癌における役割を解析している。 2.ウレタン誘発マウス肺癌発生 マウス腹腔にウレタンを1mg/g・体重の量を投与し、経時的に肺を調べた。20週間後に肺を解析すると、肺表面から観察される結節が形成され、40週間後にはその数と大きさが増大した。この結節病変を組織学的に検討したところ肺内に腫瘍を形成しており、腫瘍でのSLPIのmRNA発現と免疫組織染色でSLPI蛋白が発現していることを認めた。 3.SLPI遺伝子欠損マウスを用いた化学発癌モデルの解析 SLPIの肺発癌における役割解析を目的に、SLPI遺伝子欠損マウスにおいて、上記方法で肺腫瘍を誘発した。その結果、野生型マウスにおける腫瘍形成と比較したところ、SLPI遺伝子欠損マウスにおいて肺癌が有意に形成されにくいことが判明した。ヒトでも高率に発現されている事実からも、肺癌発生においてSLPIが関与の関与が示された。 4.yeast two-hybrid法を用いたSLPI相互作用分子の探索 従来の蛋白分解酵素阻害物質以外のSLPIの化学肺癌発生における分子機能を解析する目的に、BD Bioscienceのキットを用い、baitベクターにSLPI cDNAを挿入し、preyに肺cDNAを用いて作成した。その結果、現在18個の陽性クローンを検出し、検証を行っている。本研究により少なくとも化学発癌モデルにおいてSLPIが重要な役割を果たしていることが示された。しかしながら、従来の蛋白分解酵素阻害物質以外の機能については明らかにされてない。SLPI相互作用分子の解析は肺の発癌において重要な意義を持つと考えられる。
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Research Products
(6 results)