2004 Fiscal Year Annual Research Report
カポジ内腫関連ヘルペスウイルスによる宿主の転写制御とがん化機構の解明
Project/Area Number |
16022202
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤室 雅弘 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (20360927)
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Keywords | ヘルペス / ウイルス / カポジ肉腫 / エイズ / 潜伏感染 / がん / 移植 / 診断 |
Research Abstract |
KSHVは、潜伏感染後にウイルス蛋白質である潜伏感染関連核抗原(LANA)を発現する。LANAは、KSHVが関与する全ての悪性腫瘍で発現が観察され、宿主細胞のがん化に深く関与していると考えられている。我々は、LANAの新規結合タンパク質を探索する目的で、LANAをbaitとしたYeast two-hybrid screeningを行った。その結果、Eleven lysine-rich leulkemia(ELL)をLANA結合タンパク質として同定した。ELLはRNA polymerase IIによる転写伸長の促進に寄与することが知られている。一方で、急性白血病において、ELL遺伝子は転座を起こしMLLと融合し、その発がんの原因遺伝子である。また、ELLはp53と直接結合することで、p53による転写調節を抑制し、抗アポトーシス作用を示すことが報告されている。本研究において、我々はLANAを介する新規がん化機構の解析を行ない以下の知見を得た。 KSHV感染細胞核内においてLANAはGSK-3betaと共にELLを標的とする核内リン酸化制御システムを形成していた。すなわち、GSK-3beta、ELL、LANAは三者複合体を形成する。一方、非感染細胞内においてGSK-3betaはELLをリン酸化し、ユビキチン依存的なELIの分解を誘導していた。しかし、このELL分解はKSHV感染、つまりLANAの発現により阻害された。また、LANAを発現している複数のKSHV感染がん化B細胞株において非感染細胞より有意にELLの蛋白質量が上昇していた。ELLは白血病の原因遺伝子の一つであり、p53を阻害することで抗アポトーシス活性を有する。このことから、LANAによるELLの蛋白質レベルでの安定化(ELLの有する発がん活性の増強)がKSHVの発がんに関与していると考えられる。
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Research Products
(5 results)