2004 Fiscal Year Annual Research Report
組織幹細胞の分化異常がもたらす皮膚腫瘍形成のメカニズム
Project/Area Number |
16022260
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
深見 希代子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40181242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 由和 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (60366416)
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Keywords | ホスホリパーゼC / イノシトールリン脂質代謝 / 表皮幹細胞 / 皮膚腫瘍 / 分化制御 |
Research Abstract |
イノシトールリン脂質代謝の要の酵素であるホスホリパーゼC(PLC)の中でも、進化的に最も古いデルタタイプの遺伝子欠損マウスを網羅的に作製し、デルタタイプPLCが生命の基本的現象に関与する可能性を検討した。この中で、PLCδ1遺伝子欠損(KO)マウスは、ヌードマウス様の毛のないマウスとして生まれ、生後8日には表皮での異常増殖が観察された。また生後15日頃には,脂腺の拡大とCystと呼ばれる空胞状の分化異常を示す構造が顕著に観察され、表皮幹細胞が毛包へ分化できず、代わりに脂腺と表皮に分化していることが判明した。これらの結果は、PLCδ1が表皮幹細胞の増殖と分化のスイッチングと、毛包や表皮、脂線への分化の方向性の決定に重要であることを示唆している。更にPLCδ1遺伝子欠損マウスでは、生後3か月までに約20%のマウスで皮膚腫瘍が生じることを見出した。そこで、次にどの様なメカニズムで表皮幹細胞の増殖と分化の方向性が決定されていくのか、また組織幹細胞の分化の異常と癌の形成がどの様に関わっているのかを明らかにすることを試みた。多くの癌細胞が幹細胞の性質である自己複製能を持ち、分化異常と癌発症には深い関係があることから、PLCδ1KOマウス表皮幹細胞の性質を検討した。表皮幹細胞をヒゲのbulge部分から単離し新生児の表皮に移植した所、野生型マウスからの表皮幹細胞をPLCδ1KOマウスに移植した場合には、毛包へのシグナルが観察されなかった。このことは、表皮幹細胞自体の異常ではなく、誘導側、即ち表皮幹細胞を取り囲む微細環境の異常、または、表皮幹細胞と微細環境のシグナルの受け渡しに何らかの異常があることを示唆している。
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Research Products
(6 results)