2004 Fiscal Year Annual Research Report
G1期サイクリンの発現によるゲノム不安定化の分子機構
Project/Area Number |
16022262
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 誠司 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助手 (50263314)
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Keywords | がん / CDK / ゲノム不安定化 / G1期サイクリン / GCR |
Research Abstract |
ガンは正常な増殖制御を失い異常増殖する細胞の集団であり、ガン細胞は、G1期CDKの活性化経路に異常を持ち、正常細胞に対し増殖優位性を示すとともに、ゲノムの不安定化もガン細胞の大きな特徴として観察される。研究代表者はこれまでに、真核細胞のモデルである出芽酵母を用いた研究から、G1期CDKの異常活性化がゲノムの不安定化を誘導することを示すデータを得た。本研究では、このゲノムの不安定化がどのような過程を経て生じるのかを明らかにすることを目的とし、解析を進めた。 G1期CDKの異常活性化はゲノムDNA複製の効率を低下させることが予測されたため、本研究では、複製フォークが長時間存在することで組換え修復系等の活性化が起きてゲノムの不安定化が引き起こされるという仮説を立て、出芽酵母を用いてその検証を行った。ゲノムの不安定化が実際に起きたことを知る指標としては、細胞分裂あたりのGCR (Gross Chromosome Rearrangement;転座、染色体腕の欠失、染色体内での欠損や逆位など)の頻度を計測するアッセイ法を用いた。このアッセイ法では、第V染色体上に近接して配置した2つのマーカー遺伝子の喪失を指標としてGCRの起きる頻度を算出できる。出芽酵母ゲノム上に存在する複製フォークの進行を阻害あるいはスローダウンさせる領域を、染色体上のGCRマーカー遺伝子の近傍に人工的に配置し、複製フォーク進行阻害配列の有無がGCR発生頻度に直接影響を与えるかどうかを調べたところ、阻害配列の導入により、ゲノムの不安定化の指標となるGCRの大幅な増加が見られ、G1期CDKの異常活性化とあわせると相乗的な効果がみられることが分かった。これらの結果は、G1期CDKの異常活性化によるゲノムの不安定化、ひいてはがん細胞におけるゲノムの不安定化がおこる機構を理解する上で非常に重要なものであると考えている。
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Research Products
(1 results)