2004 Fiscal Year Annual Research Report
標的化分子を提示した中空バイオナノ粒子によるがん特異的遺伝子治療法の開発
Project/Area Number |
16023239
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒田 俊一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (60263406)
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Keywords | 遺伝子治療 / DDS / B型肝炎ウイルス / 中空バイオナノ粒子 / Homing Peptide |
Research Abstract |
ヒト肝臓に対し極めて高い特異性及び感染性を有するB型肝炎ウイルス(HBV)の感染機構を担う外皮タンパク質を組換え酵母で「中空バイオナノ粒子」として大量生産し、粒子内部に遺伝子発現ベクターや薬剤を封入して、ヒト肝臓特異的で高効率な遺伝子・薬剤導入用ベクターとすることに成功している。今回、中空バイオナノ粒子を用いて、遺伝子治療と従来の抗癌剤治療を組み合わせる初めての試みを行った。また、非癌組織ではなく肝癌組織に対して高い親和性を示す中空バイオナノ粒子を作製し、遺伝子治療効果を最大限に高める研究を行った。中空バイオナノ粒子法は、能動的標的化能を有し、遺伝子及び薬剤両方に使用できる生体内ピンポイントデリバリーシステムである。同等の機能を有するデリバリー技術は現在のところ存在しない(2003年Nature Biotechnology, The Lancet等に本方法の優位性の紹介記事が掲載されている)。本研究が当初の目的どおりに達成できれば、今までの癌の遺伝子治療に比べて、(1)抗癌剤治療が併用可能となり、(2)生体内で癌組織と非癌組織を精密に区別できるので、従来の我々の方法以上にピンポイント遺伝子治療が可能になるという特徴がある。このレベルまで精密なピンポイント投与が可能なデリバリーシステムは他には存在しない。具体的には、(1)一つのドラッグデリバリーキャリアーで治療用遺伝子と抗癌剤を同時に生体内でピンポイント投与できるようになった。これは中空バイオナノ粒子を用いることにより、将来の癌の遺伝子治療法の幅が大きく広がる可能性を示している。(2)正常組織と癌組織を生体内で識別可能なHoming Peptideを単離し、実際に中空バイオナノ粒子と融合すると、生体内標的化能及び物質導入活性を示すことが判明した。今までの標的化は癌組織と非癌組織の区別ができないものが多かったが、コンビナトリアルバイオエンジニアリング的手法を使用して、もっと多様なHoming Peptideを選抜できると考えている。(3)正常組織と癌組織を区別するために糖鎖構造の差を認識するレクチンを提示する為のストレプトタグ提示型中空バイオナノ粒子を作製した。これは以前に作製した任意の抗体提示用のZZタグ(Protein AのFc結合部位)提示型中空バイオナノ粒子と共に、今後の新規がん治療法開発に使用できる。
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Research Products
(6 results)