2004 Fiscal Year Annual Research Report
時計遺伝子を基盤にした細胞動態の日周リズムの成因解明と診断法の開発
Project/Area Number |
16023245
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大戸 茂弘 九州大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (00223884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 駿 九州大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (40218699)
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Keywords | 生体リズム / 時間薬理 / 時計遺伝子 / 細胞動態 |
Research Abstract |
Methionine aminopeptidase 2(MetAP2)は細胞増殖に関与するプロテアーゼであり、増殖が盛んな腫瘍や血管内皮細胞で発現が亢進している。腫瘍組織においてMetAP2の活性に日周リズムが認められたことから、その成因を時計遺伝子に着目して検討した。マウスMetAP2遺伝子の5'上流域のクローニングを行ったところ、転写開始部位から1.2kbp上流の間に、8つのE-boxが存在することが明らかとなった。腫瘍組織内でのMetAP2 mRNAは明期後半から暗期前半に高値を示す有意な日周リズムを示した。また時計遺伝子の蛋白発現量が、正常細胞での日周リズムと類似していたことから、時計遺伝子群が腫瘍組織内においてFeedback loop機構を形成しており、MetAP2遺伝子の発現に影響を及ぼしていることが示唆された。Luciferase assayにおいて、MetAP2の転写活性はClock/Bmal1共存下で上昇し、この活性はPer2およびCly1の共存下で用量依存的に減少した。さらに時計遺伝子蛋白がMetAP2 promoter領域のE-boxに直接結合するか否か、結合量に日周リズムが存在するか否かChIP Assayを用いて検討した。その結果、Clock、Bmal1蛋白はE-boxに直接結合し、結合量の時間的変化はMetAP2 mRNAの日周リズムと同じ波形を示した。またmRNAの転写関連因子として一般的なPol IIやAcH3の時間的変化も時計遺伝子の結合量と同様の波形を示した。以上の結果から、MetAP2 mRNAの転写には、時計遺伝子からなるFeedback loop機構が関与しており、この振動体が刻むリズムによってMetAP2の発現に日周リズムが生じている可能性が示唆された。生体リズムの分子機構をふまえた血管新生阻害薬の時間治療を考えた場合、MetAP2の活性が上昇する明期前半に投薬することで、血管新生阻害薬が効果的に作用し、より高い抗腫瘍効果が得られると考えられる。このような時間生物学的な観点からのゲノム創薬のアプローチは、癌治療における新たな分子標的治療薬の創製に重要であり、分子標的治療薬の時間治療への今後の展開が期待される。
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