2005 Fiscal Year Annual Research Report
p53転写因子とTGF-βシグナルの協調作用による細胞分化制御
Project/Area Number |
16026228
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 厚 広島大学, 大学院理学研究科, 助教授 (20314726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹林 公子 (鈴木 公子) 広島大学, 大学院理学研究科, 非常勤研究員 (00397910)
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Keywords | 発生・分化 / 発現制御 / 癌 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
<1研究目的> 研究代表者は、TGF-βファミリーに属する細胞増殖因子による細胞分化誘導の分子機構を解析する過程で、ヒトの癌抑制遺伝子として知られているp53転写因子とTGF-βシグナルが協調的に働いて細胞分化を制御することを見出した。また、p53とTGF-βが共に癌抑制シグナルとして機能することから、2つのシグナル系の協調作用の分子機構を解析し、(1)TGF-βの細胞内シグナル分子(Smad)とp53が細胎内で結合すること、(2)TGF-βシグナル存在下において、p53が効率良く標的遺伝子の転写制御領域に結合することを示した[Takebayashi-Suzuki et a1. Development 130,3929-3939(2003)]。本研究では、癌抑制経路の解明と癌化の分子機構を理解することを目的として、p53とTGF-βシグナルの協調作用の分子基盤を明らかにする。 <2研究成果> 平成16年度までの研究では、p53とSmadの結合に関与するタンパク質領域の固定をおこない、p53のDNA結合ドメインが、Smadとの結合に必要かつ十分であることが明らかにした。p53のDNA結合ドメインは、ヒトの癌において変異が高頻度に見つかる領域であり、少なくともいくつかの変異はp53とTGF-βシグナルの協調作用に重要である可能性が考えられた。そこで、平成17年度では、主にヒトの癌において高頻度に起こるアミノ酸置換を模倣したp53変異体を作製し、これらの変異体とSmadとの結合を免疫沈降法によって解析した。p53のDNA結合活性に影響が少ないことが示されているp53変異体を中心に選んで解析をおこなった結果、一つのアミノ酸置換変異体が野生型に比べてSmadとの結合が弱まることが分かった。このアミノ酸残基は、p53の結晶構造からタンパク質表面に露出していることが推測されることから、Smadとの結合に関与する可能性が高いと考え、現在、より詳細な機能解析をおこなっている。
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