2004 Fiscal Year Annual Research Report
全細胞トレーシングによるマウス胚の軸形成機構の解析
Project/Area Number |
16027224
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤森 俊彦 京都大学, 医学研究科, 助手 (80301274)
|
Keywords | マウス / 初期胚 / 軸形成 |
Research Abstract |
受精後から前後軸が形成されるまでの初期のマウス胚の全ての細胞の場所を経時的に観察することによって、胚発生における全細胞の挙動を把握し、軸形成の最初のイベントを同定することを目標としている。本年度は以下の結果を得た。 Rosa26遺伝子座に、ヒストンH2Bと融合したEGFPを組み込んだマウスを作製し、このホモ接合体同士の交配により得た胚を利用することで、顕微鏡下で細胞の挙動の連続観察を可能にした。 主に受精から胚盤胞までの時期について詳細な解析を行った。胚盤胞は、内部細胞塊(ICM)の細胞と、栄養外胚葉(TE)の2種類の細胞からなる。また、胚盤胞には、ICMのある側と無い側という軸が設定でき、E-Ab軸と呼ばれている。2細胞期からの連続観察により、細胞の分化と、軸の形成について解析を行い、以下のことが明らかになった。1)胞胚腔が広がり始めるまでは、透明帯の形や大きさはほとんど変化しない。2)第2卵割直前の2細胞期の透明帯の外径は2つの細胞が接しあう面(割球境界面)に平行な外径の方が、並んだ2つの細胞を結ぶ線に平行な外径に比べ約1割短かい。3)第1卵割面の向きによらず、2細胞期の2つの割球は透明帯の形に沿うように存在する。4)2細胞期の割球境界面と胚盤胞のE-Ab軸との角度は、垂直に近い傾向にある。5)コンパクション以降、透明帯と胚との間の空間が比較的広くなり胚が透明帯の中で回転する。また、最初に見られた胞胚腔の場所と、2細胞期の割球境界面との角度はほぼランダム。これらのことから、E-Ab軸は第1卵割後の2つの割球の性質の違いに依存するのでなく、透明帯の形に依存して2細胞期の割球境界面(透明帯の短径)に垂直となることが示唆された。
|