2004 Fiscal Year Annual Research Report
脚・触角の分節形成から探る形態形成の協調的制御機構
Project/Area Number |
16027233
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中越 英樹 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (50314662)
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Keywords | ショウジョウバエ / 形態形成 / モルフォゲン / Notchシグナル / EGFRシグナル / dve |
Research Abstract |
形態形成因子(モルフォゲン)の拡散によって生じる濃度勾配は、個々の細胞に異なる位置情報を与える。ショウジョウバエのdefective proventriculus(dve)遺伝子は、形態形成因子Wingless(Wg)、Decapentaplegic(Dpp)に依存して発現するホメオボックス遺伝子である。脚原基においてNotchシグナルは同心円状に活性化され、脚原基の増殖および分節化に関与する。蛹期の脚原基において、Notch活性化領域は脚分節様構造の遠位部側で、Dveは分節様構造をまたいで発現するため、両者は分節様構造の遠位部側で部分的な重複を示す。発生の進行に伴ってこの重複部分でのDve発現が抑制されることが、成虫脚分節間をつなぐジョイントと呼ばれる構造を形成するために重要である。EGFRシグナルを活性化するリガンド分子Veinは、脚原基の遠位部で発現し、近遠軸に沿った活性勾配を作ることによって、脚の遠位部のパターン形成に関与する。Dve発現抑制領域にEGFRシグナルを活性化させると、Notchシグナルを阻害した時と同じようなジョイント構造の欠失が観察される。また、蛹期におけるEGFRシグナルの活性化領域は、Notch活性化領域ときれいに相補的なパターンを示す。両シグナルの強制発現クローン解析の結果から、両者の間に拮抗的なフィードバック制御機構が存在することを明らかにした。また、dve変異体においては、脚ジョイント構造が異所的に出現することを見出した。このような表現型は、dishevelled(dsh)など細胞内平面極性に関わる分子の変異体においても観察され、dsh変異体ではDve発現レベルが顕著に低下していることを明らかにした。 触角と脚はともに明確な分節構造を有し,触角が脚に転換する変異体が存在することや遺伝子発現パターンの類似性などから,形成メカニズムの共通性が指摘されている.触角原基第1-2節(a1-a2)で発現するCut,第2節(a2)で発現するSpalt,第3節(a3)で発現するDacshundの発現領域との比較から,Dve発現領域は第3節よりも遠位部側で,二重または三重のリング状に発現していた.Notch活性化領域(E(spl)mβ)もリング状に観察され,Dve発現領域とほぼ相補的であったことから,翅や脚原基と同様の制御機構の存在が予想された.
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