2004 Fiscal Year Annual Research Report
マウス神経幹細胞の細胞分化・分裂過程における癌抑制遺伝子PTC1の機能の解明
Project/Area Number |
16027258
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
元山 純 独立行政法人理化学研究所, 元山研究ユニット, ユニットリーダー (70321825)
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Keywords | 神経幹細胞 / 神経発生 / マウス |
Research Abstract |
Ptc1遺伝子は脳、皮膚、筋肉等における癌抑制遺伝子であるが、その癌抑制機構は解明されていない。成体での発癌が細胞分裂制御の破たんであるとすれば、Ptc1は成体幹細胞の正常な分化または分裂制御に関与しているはずである。本研究課題の目的はマウスPtc1の神経幹細胞の発生における機能を解明である。元山はPtc1の脳の発生後期での機能を明らかにするため、Ptc1の一部を欠いた変異体マウスmesenchymal displasia (mes)の表現型の解析を開始した。遺伝研城石らがこの変異マウス系統においてPtc1遺伝子に変異があることを発見し、四肢等での表現型が既に発表されている。この変異マウス系統ではPtc1 mes/mesホモ接合体は出生し生存可能である。Ptc1+/-マウスとPtc1+/mesマウスとを交配しPtc1 mes/-マウスを作成したところ、胎齢17〜19日に致死となること、稀に出生することがあるが直ちに母親に食殺されることが分かった。Ptc1 mes/-胚はほとんどすべてに浮腫が認められることから循環器系の異常によって致死となることが考えられた。脳の発生については、全てのPtc1 mes/-胚で正常胚に比べて嗅球が小さく大脳半球が大きかった。大脳の内部組織を観察したところ、嗅球では細胞密度が低く細胞層が乱れており、大きく見えた大脳半球は脳腔が拡大し大脳皮質は正常の8割程まで薄くなっていた。以上の観察結果から次の仮説が導かれた。嗅球の細胞と大脳皮質の細胞の起源は前脳腹側の神経幹細胞が存在する部分である。Ptc1はそれらの細胞で発現している。Ptc1 mes変異によって神経幹細胞の分裂が低下し結果として嗅球および大脳皮質への細胞の供給が減少し観察された表現型が生じた、すなわちPtc1が神経幹細胞の細胞分裂もしくは分化に関与しているという仮説をたてることができた。
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