2004 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー照射による結晶の物性発現と制御に関する理論的研究
Project/Area Number |
16032204
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長尾 秀実 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (30291892)
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Keywords | レーザー制御 / スピン / 磁性 |
Research Abstract |
本研究は多重バンド系での電子移動等がもたらす物性発現を中心に研究を展開した。 (1)レーザー照射による二重バンド系の磁性発現 二重バンド構造を持つ有機分子性結晶に特徴的なヘリーンボーン構造および二層構造に対する物性発現を考察した。このような構造を持つ系でレーザーなどの外場によりフェルミ面が変化した場合の磁性発現に関する理論的考察を行った。有効電子間相互作用をon-siteクーロン斥力とスピン帯磁率で表わし、Heisenbergモデルにおけるサイト間有効交換積分Jに対する解析式を導いた。ヘリーンボーン構造ではフェルミ面の変化に対して常に反強磁性的相互作用が働いていることが分かった。一方、二層構造を持つ場合はhalf-filling近傍で強磁性的相互作用が働いていることが見出せ、half-fillingから離れた場合、反強磁性的相互作用に変化している。このことは外場などによりフェルミ面が変化した場合、強磁性-反強磁性のスピン秩序遷移の可能性を示唆する。上記のことから二重バンドを持つ結晶構造でも二層構造を持つ結晶では強磁性-反強磁性のスピン秩序遷移の可能性があることが理論的に示された。 (2)スピン状態のレーザー制御シミュレーション スピン-軌道相互作用を利用してレーザーパルス列による誘導ラマン断熱通過法を用いて、Cl_2分子スピン一重項状態分子を三重項状態へ完全に遷移する理論シミュレーションを行った。スピン-軌道相互作用を考慮にいれCl_2分子の電子状態計算を行った。この計算から一重項基底状態から三重項励起状態への4つの反応経路を見つけた。以上のことから分子系におけるスピン一重項-三重項レーザー制御の可能性が示された。励起状態での分子の解離寿命などのさらなる考察が必要である。
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Research Products
(6 results)