2004 Fiscal Year Annual Research Report
「配位基過剰型錯体」の動的機能を用いた集積型金属錯体の構築
Project/Area Number |
16033201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 陽一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30004500)
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Keywords | 酸化還元反応 / レニウム六核錯体 / ルテニウム三核錯体 / 配位子間相互作用 / 発光性錯体 / 自己集積化膜 / dπ-pπ相互作用 / 非配位官能基 |
Research Abstract |
本研究では、配位部位を残した多座配位子(非配位官能基を持つ多座配位子)を持つ金属錯体を系統的に合成し、これを利用した複合型錯体の合成を目指している。本年度は、オキソイオンを中心に持つRu三核錯体を主な研究対象とした。(1)Ru三核骨格からのCOの光脱離反応。この反応を、まず溶液中で調べ光脱離反応が、紫外部のRu→COの電荷移動吸収帯の照射で効率的に起こることを明らかにした。次に、この三核錯体を金電極上に、Au-S結合(S-を含む配位子を使用)により固定化(自己集積化)し、光脱離反応が同様に効率的に起こることを明らかにした。これは表面固定の化学種からの光CO脱離反応の最初の観測例である。この反応は、このCO脱離サイトに架橋配位子を導入し、別のユニットとの連結を行う上で基礎となる重要な反応である。(2)表面固定Ru三核錯体上でのCO/NOの配位と脱離の電位制御。Ru三核錯体に配位したCOの脱離は、この三核骨格をRu_3(II,III,III)からRu_3(III,III,III)に酸化することによっても引き起こされる。また、一旦はずれたCOを、骨格を還元することで再び導入出来ることを明らかにした。一方、NOは酸化された状態で配位するが、還元すると脱離することがわかった。すなわち、酸化状態を電位で制御することにより、COとNOの配位を選択的に起こさせることが出来ることがわかった。このような電位制御は溶液内では速やかに行うことが出来ないが、電極表面上では速やかな電位変化が達成出来、このような選択的反応も容易に引き起こすことが出来る。(3)架橋配位子で連結したRu三核錯体ユニットの酸化還元相互作用。Ru三核錯体骨格は、dπ-pπ相互作用に基づくπ系を持ち、この骨格を通したπ性の相互作用に興味がもたれる。架橋配位子で隔てられた2個の等価なRu三核ユニット間に相互作用があれば、その酸化還元波が分裂する。この様子はこれまでpyrazineや4,4'-bipyridineを架橋配位子とする系で調べられて来たが、今回は一連のジフォスフィン配位子が同様に酸化還元相互作用を伝搬することを明らかにしたが、その様子はpyrazineなどとは異なる側面を持つことが分かった。(4)Re六核骨格を介した配位子間の酸化還元相互作用。Reが八面体型に配列した六核錯体ユニットを隔てた6個の配位子の還元波がわずかながら分裂を示すことを見出した。このことはRe六核骨格が相互作用を伝搬出来る系であることを示している。Re六核骨格は発光性であることが知られており、光照射と酸化還元相互作用を組み合わせた機能に期待が持たれる。分子軌道計算によれば、Re六核骨格は、骨格の各面上に位置するSやSeのようなキャップ配位子と、Reの軌道とから、π性を持つと考えられる軌道のoverlapが起こり、この骨格がπ性の相互作用を伝搬出来ることが示唆された。
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Research Products
(7 results)