Research Abstract |
本研究課題では,我々が既に見いだし報告している「ニッケル触媒による1,3-ジエンとアルデヒドの分子間カップリング反応」の「触媒リサイクル型反応」への展開を目指し,イオン性液体(ionic liquid, IL)中での反応の検討を行った.本反応においてはトルエンなどの通常の有機溶媒中でPPh_3を配位子として用いるとE-選択的なカップリング反応が進行する.この反応に関してILを溶媒として用い検討を行ったところ,BMI(butylmethylimidazolium)骨格を持つIL中での反応では,ILのカウンターアニオン部の違いが反応性に大きく影響することがわかった.すなわち,BF_4^-をアニオンとして持つBMI・BF_4中での反応ではE-選択的にカップリング体が収率良く得られるのに対し,他のカウンターアニオンを持つBMI・PF_6やBMI・NTf_2中では反応はほとんど進行しなかった.一方,BDMI(butyldimethylimidazolium)骨格を持つIL中での反応ではカウンターアニオンの違いは反応にほとんど影響を与えず,いずれの場合もE-優先的にカップリング体が収率良く得られた.次にNHCを配位子として用いたZ-選択的なカップリング反応に関してIL中での反応を検討した.その結果,BDMI・BF_4を用いた反応では,THFを溶媒とした反応と比較すると収率は低下するものの,ほぼ完璧なZ-選択性でカップリング体を与えることがわかった.また,BDMI・NTf_2中での反応では,高いZ-選択性を保持したままカップリング体の収率が大幅に向上した.これらの結果を基に,今後「触媒リサイクル型反応」への応用を目指し,配位子の設計を含めた触媒系の改良を行うと共に,立体選択性の向上や不斉合成への応用などを可能とする新しいイオン性液体の創製へと研究を展開していきたいと考えている.
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