2004 Fiscal Year Annual Research Report
飽和型シクロポリシランを前駆体とする開殻化学種の生成と反応
Project/Area Number |
16033213
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
松本 英之 群馬大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90008467)
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Keywords | シリルアニオン / シリルラジカル / シクロポリシラン / 開殻化学種 / ジアニオン / ビラジカル |
Research Abstract |
ケイ素上にハロゲンを有する単環系および多環系ポリシランから誘導される開殻化学種について、以下の知見を得た。 1)昨年度に引き続き、結晶として単離可能なシリルビラジカルの生成を追究した。trans-1,3-ジブロモ-1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチルシクロテトラシラン(1)を、ベンゼン中でカリウムと反応させ、反応過程を電子スピン共鳴法(ESR)で追跡した。その結果、この反応では、三つの常磁性化学種の生成を経て、ジカリウム体が得られることがわかった。なお、三番目の常磁性化学種はESRではサテライトを伴う二重線として観測されたが、反応系に四塩化炭素を加えると、ESRシグナルは直ちに消失し、trans-1,3-ジクロロ-1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチルシクロテトラシラン(2)が得られた。このことから、この常磁性化学種は1,2,2,3,4,4-ヘキサ-tert-ブチル-1,3-シクロテトラシランジイルビラジカル(3)であると推定された。また、このシリルビラジカルは、ESRで二重線として観測されることから、二つの不対電子が相互作用した三重項シリルビラジカルであると考えられる。以上から、ケイ素系分子では、初めてのシリルビラジカルを生成することに成功した。現在、このビラジカルを結晶として単離し、X線結晶構造解析で構造を定めることが試みられている。 2)三環式ラダーポリシランである、ドデカイソプロピルトリシクロ[4.2.0.0^<2,5>]オクタシラ(4)ンを、18-クラウン-6エーテル存在下、THF中でカリウムで還元すると、ケイ素-ケイ素結合が開裂して、ビス(2-ポタッシオヘキサイソプロピルシクロテトラシラニル(5)が生成した。この二環系ジアニオンは赤色の結晶として得られた。この結晶のX線結晶構造解析によって、5の構造上の特徴が明らかにされた。還元反応の過程を電子スピン共鳴法(ESR)で追跡した結果、はじめに4の一電子還元によって、ラジカルアニオンが生成し、次いで、ラジカルアニオンがさらに一電子還元されてジアニオン5が生成することが判明した。
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