2004 Fiscal Year Annual Research Report
炭素π電子系配位子の動的構造制御に基づく触媒活性種の設計と応用
Project/Area Number |
16033237
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺尾 潤 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00322173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神戸 宣明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60144432)
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Keywords | アルキルハライド / クロロシラン / クロスカップリング反応 / ニッケル触媒 / ブタジエン / アート型錯体 / 一電子移動 / アルキルフルオリド |
Research Abstract |
ゼロ価NiやPdは、1,3-ブタジエンと穏和な条件下で容易に反応し、ビスアリル錯体を与える。この錯体は、ブタジエンの2量化や3量化反応の中間活性種として古くから知られている。我々は、これを新しい型の触媒活性種としてとらえ、有機ハロゲン化物や種々の有機典型金属化合物との反応を検討したところ、ハロゲン化アルキルをアルキル化剤とするカップリング反応が効率よく進行することを最近見出した。また、ハロゲン化アルキルの代わりにクロロシランを用いることにより、ブタジエンの2量化を伴うアリルシランの新しい合成反応を開発することに成功している。これらの反応系では、この錯体が有機典型金属試剤と反応し、アリル配位子のη^3からη^1への変換を経て対応するビスアリル型アート錯体を生成すること、およびこれがアルキルハライドやクロロシランに対して高い反応性を有していることが特徴である。現在、これらの反応機構を解明し、ビスアリル型配位子を有する新しい触媒活性種の創成と合成化学的応用に向けた研究に取り組んでいる。例えば、アルキルハライドとして反応性の低いアルキルクロリド類を用いても効率よく反応が進行し、興味深いことに、フッ化アルキルを用いることにはじめて成功した。しかし、この反応系では、ブタジエンを大過剰に添加しないと効率が悪い。そこで、分子内にジエン部位を2カ所持つテトラエンを用いて反応を行ったところ、基質に対し10%の添加量で収率が大きく向上した。本触媒反応系はグリニャール試薬の代わりに有機亜鉛試薬を用いることができるが、この場合も、過剰量のブタジエンを添加する必要がある。そこで類似のテトラエン骨格を有する添加剤を用いて、フッ化アルキルとグリニャール試薬とのクロスカップリング反応を検討したところ、大幅な反応時間と収率の改善に成功した。これらの結果は、テトラエンが0価のニッケル錯体と反応し、ビス-π-アリル錯体を効率よく形成するためと考えられる。
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Research Products
(7 results)