Research Abstract |
本研究は,金属多核骨格を有するナノクラスター分子の合成を基盤として,それらの動的挙動に基づく新規機能及び反応性の開発を目的とする。平成15年度の研究課題(15036246)及び昨年度の研究に引き続き以下の項目について研究を展開した。 (1)直鎖状六核クラスターの酸化還元に伴う動的骨格変化の解明 直鎖状金属六核クラスター[Pt_4M_2(μ-dpmp)_4(XylNC)_2]^<3+>(M=Pt,Pd)を合成し,さらに,それらが1電子の酸化及び還元を受け,[Pt_4M_2(μ-dpmp)_4(XylNC)_2]^<4+>及び[Pt_4M_2(μ-dpmp)_4(XylNC)_2]^<2+>に変換されることを明らかにした。この過程で起こる,金属結合距離のダイナミックな伸縮についてX線結晶構造解析及び種々の分光分析によりその詳細を解明した結果,酸化に伴いクラスター骨格は保持されているが,金属六核鎖の末端部から中央部への金属結合電子の流入が生じ,金属-金属結合距離のダイナミックな変化が起こることが明らかとなった。この際生じるクラスター骨格内での電子の流動について,DFT法を用いた分子軌道計算によりその要因を解明を行った。結果の一部はAngew.Chem.Int.Ed.(2004)に発表した。また,還元剤等を工夫することにより,末端配位子がヒドリド,ヨード,カルボニル等の直鎖状白金六核クラスターの合成法を確立すると同時に,末端配位子を持たない配位不飽和白金六核クラスターの合成にも成功し,その構造・物性等について研究を展開した。これら一連の直鎖状クラスターは単原子金属鎖を内包する分子ワイヤーの構築において,分子として取り扱い可能な有望なナノ構造単位と考えられる。 (2)PNNP多座配位子を用いた三核錯体の開発 PNNP型配位子dpnapyを用いることにより,電子豊富なd^<10>金属中心を有するPt(0),Pd(0)二核錯体,また,d^8金属中心を有するPt(II),Rh(I)二核錯体を合成し,ヒドリド及び銀イオンの取り込みに関連した動的挙動について研究を行った。結果の一部はOrganometallics(2004),J.Organomet.Chem.(2006)に発表あるいは発表する予定である。 (3)水銀原子を取り込んだかご形白金六核クラスター 水銀原子を2個取り込んだ白金六核クラスター[Hg_2Pt_6(diphos)_3(RNC)_6]の合成法を確立し,その構造の詳細を明らかにすると同時に,電子状態についてもDFT法分子軌道計算により検討を行い,水銀原子の取り込みに関する要因を明らかにした。結果の一部をOrganometallics(2005)に発表した。
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