2004 Fiscal Year Annual Research Report
リン原子の立体的および電子的柔軟性に基づく多核金属錯体の動的架橋構造
Project/Area Number |
16033245
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水田 勉 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70221603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 和幸 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90263665)
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Keywords | ホスフィノボラン / メタラホスフィノボラン / P_2B_2 / ジホスフィン架橋 / ナフタレン / 架橋2核錯体 |
Research Abstract |
ホスフィノボラン(R_2P=BR_2)は,ホウ素とリンとの間にπ結合を有する。このπ結合は、アルケンに比べると弱く、容易に開裂して多量体を生じる。このため、ホスフィノボラン(R_2P=BR_2)は、P-Bを骨格とする無機ポリマーの原料として注目されている。今回我々は、リン上の置換基をCpFe(CO)_2としたメタラホスフィノボランCpFe(CO)_2P(Ph)-BCl_2の合成を試みた。その結果、メダラホスフィノボランそのものは単離できなかったが、これを中間体として経たと考えられる2量体の合成に成功した。X線解析の結果より、この2量体では,2つの鉄フラグメントがP_2B_24員環によって架橋された構造をしていることが判った。現在この4員環骨格の開裂を利用した単量体化あるいは、ポリマー化について検討している。 2つのメタルフラグメントを近傍に配置するために、リン配位子を架橋とすることは,広く行われているが、P-P直接結合を架橋にした例は比較的限られている。この原因はP-P結合が比較的切れ易いことにある。そこで、新たな架橋配位子として、ナフタレン骨格でP-P結合を補強した配位子1,2-dihydro-1,2-diphenyl-naphtho[1,8-c, d]1,2-diphospholeを合成し、2核錯体合成へ利用した。この配位子はP-P結合に対して2つのフェニル基がtrans配置となっていた。この配位子を用いて、右に示した方法により2つのリン上にM(CO)_5フラグメント(M=Cr, Mo, W)を導入すると2つのメタルフラグメントがcisおよびtrans配置となった2核錯体が得られた。これらの錯体における架橋部は、期待したとおりの熱的安定性を示した。
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