2004 Fiscal Year Annual Research Report
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16033252
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
水野 一彦 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (10109879)
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Keywords | 励起分子錯体 / ラジカルアニオン / エキシプレックス / 水素結合 / 光アリル化反応 / 光環化付加反応 / ジアステレオ選択性 / ビニルエーテル |
Research Abstract |
基底状態または励起状態での水素結合、π-πメタッキング相互作用、CT相互作用を基軸とする反応性に富んだ動的励起分子錯体を設計・構築し、その特性を利用した立体選択的な新規光化学反応を開発することを目的として研究を行ない、以下の成果を得た。 (1)フェナントレンを光増感剤としてシクロヘキサン環上に置換基をもつシクロヘキシリデンプロパンジニトリルとアリルトリメチルシランとを含むアセトニトリル溶液に少量の酢酸を加えて光照射したところ、アリル化生成物と還元体がそれぞれジアステレオ選択的に得られた。酢酸の代わりにかさ高いプロトン酸として2,4,6-トレメチルピリジニウムトシラートを加えたところ、ジアステレオ選択性が向上した。本アリル化反応はフェナントレンをレドックス型光増感剤として、アリルシランから電子不足アルケンへの一電子移動、ラジカルアニオンのプロトン化、続くアリルラジカルとのカップリングにより進行し、ジアステレオ選択性はラジカルアニオンのプロトン化の段階で発現するものと推定した。 (2)シアノナフタレン誘導体とビニルエーテル類との光環化付加反応における水素結合の効果について検討した。1-シアノ-4-ヒドロキシメチルナフタレン(1)と2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(2a)とを含むジクロロメタン溶液に光照射すると、室温では顕著な立体選択性を示さなかったが、-40℃では光環化付加体が8:2の比でエンド選択的に生成した。また、1とエチルビニルエーテル(2b)との光反応では、室温でも7:3の比でエンド選択的に反応が進行し、その選択性は-40℃にすることでさらに向上した。温度可変NMRにおけるヒドロキシ基の水素の低磁場シフトおよびベンゼン中における蛍光消光実験の結果から、1と2a-bは基底状態において分子間水素結合を形成し、光環化付加反応のエンド選択性に寄与しているものと推定した。
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Research Products
(7 results)