2004 Fiscal Year Annual Research Report
ウランを含むスクッテルダイト化合物の物質探索と物性
Project/Area Number |
16037215
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
芳賀 芳範 特殊法人日本原子力研究所, 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (90354901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 悦嗣 特殊法人日本原子力研究所, 副主任研究員 (50343934)
松田 達磨 特殊法人日本原子力研究所, 研究員 (30370472)
徳永 陽 特殊法人日本原子力研究所, 研究員 (00354902)
神戸 振作 特殊法人日本原子力研究所, 主任研究員 (40224886)
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Keywords | UFe_4P_12 / 充填スクッテルダイト |
Research Abstract |
充填スクッテルダイト構造をとる物質のうち、4f^2電子配置を持つPrスクッテルダイトは、重い電子状態や多極子秩序、異方的超伝導の発見に刺激されて盛んに研究されている。一方ウランは、Prと同じく5f^2電子配置をとることが多く、Pr.と比較する上で興味深い。5f電子波動関数は一般に空間的に広がっており、周囲のイオンと強く混成する点で4f電子と異なっている。我々は、スクッテルダイト構造におかれた5f電子の挙動を明らかにする目的で、ウランを含む充填スクッテルダイト化合物の研究を行った。 UFe_4P_12は、これまでに唯一報告されているUスクッテルダイト化合物である。一般に、Uのようにイオン半径の小さなイオンは、スクッテルダイト構造の中では安定ではない。実際に、UFe_4P_12におけるUの充填率は、X線回折実験によると95%程度であると報告されている。 我々は、この物質の純良単結晶育成に成功した。単結晶X線回折及び、P-NMRによる試料評価を行った結果、過去の報告にあったようなUサイトの欠損は存在せず、Uが完全に充填された規則構造をとることを明らかにした。この試料について、電気抵抗の圧力効果、広い温度範囲での磁化、及びNMR測定を行い、5f電子による磁性と伝導の研究を行った。 電気抵抗の温度依存性から、UFe_4P_12は200K程度の狭いギャップを持っ半導体であり、これが10GPaでの圧力によりほとんど影響を受けないことがわかった。欠損のない純良な単結晶でも本質的に半導体的挙動を示すことを明:らかにした。磁化測定からは、3K以下で1.3μB/Uの飽和磁化を持っことがわかり、これはU^4+から期待される3.5μ_Bよりも小さい。この起源を明らかにするために、800Kまでの高温磁化率を測定した。その結果、室温以上の高温で見積もった有効磁気モーメントは3.0μB/Uであり、自由イオンの値に近いことがわかった。一方、室温以下では有効磁気モーメントは減少する。このような振舞いは結晶場効果によって説明可能であり、ウランの5f電子が局在していることを示す。ウラン化合物で結晶場が直接観測された少ないが、UFe_4P_12も典型物質の一つとなる可能性が高い。NMRの結果も、局在モーメントの立場から理解することができるが、超微細相互作用は希土類の4f電子に比べて極めて大きい。このことは、局在系でありながら、5f電子の広がりを強く反映していると考えられる。
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