2005 Fiscal Year Annual Research Report
π-d相関系有機導体の広帯域伝導性とダイナミックス
Project/Area Number |
16038205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広志 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (30275292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 直樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50124607)
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Keywords | 有機伝導体 / マイクロ波 / 金属絶縁体転移 / 超伝導 / 複素伝導率 / 擬ギャップ / 誘電分散 / 電荷移動錯体 |
Research Abstract |
ラジオ波周波数以下の計測装置を新たに作製し、α-(ET)_2I_3における複素誘電率・伝導率の周波数分散を観測した。まず、ラジオ波域でc^*方向の複素伝導率の周波数分散を測定した。周波数分散が顕著であったのは、10^8-10^9Hzの領域である。ドルーデモデルに基づいた解析を試みたところ、周波数分散がよく再現されることが分かった。このとき、パラメータとしてプラズマ振動数と緩和時間が入ってくるが、それらの値は、通常の金属で得られている値に比べて約3桁異なっている。α-(ET)_2I_3のab面における光学伝導率がすでに報告されているが、プラズマ振動数は10^<13>Hzのオーダーをとり、c^*方向に比べて約3桁大きい。この違いは、伝導率の異方性を反映したものと考えられる。また、プラズマ振動数と緩和時間ともにT_<MI>〜170Kの温度域で、その温度変化が激しくなった。NMRやラマン分光測定から、T_<MI>以上の温度域でも電荷不均衡化の兆候が報告されている。したがって、プラズマ振動数と緩和時間の激しい温度変化は、電荷不均衡化の前駆現象が現れ、温度の低下とともに成長していると考えられる。 ラジオ波域における誘電率はT_<MI>以下で、温度に依存せず、ほぼ1をとる。これまでに報告があるab面内の誘電率が10-10^2の値をとることを考えると、面内と面間方向では極めて大きい異方性が誘電応答に存在することが分かった。より周波数を下げていくと、低温の誘電率が増加することが見出された。誘電率の実部は、階段状の変化が低温でみられ、周波数に依存して変化する。一方、誘電率の虚部の温度変化には、ピークを観測した。周波数が増加するにつれ、ピークが現れる温度が上昇する。誘電率の実部と虚部にみられた異常が、デバイ緩和に起因することを明らかにした。デバイ緩和の出現は、c^*方向に誘電分極が生じることを示している。その原因として、電荷不均衡化したπ電子の寄与が考えられる。
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Research Products
(4 results)