2004 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起スピン転移による分子性導体の伝導性・磁性制御
Project/Area Number |
16038206
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二瓶 雅之 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (00359572)
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Keywords | スピンクロスオーバー錯体 / 光誘起スピン転移 / 分子性導体 / 複合系 / 光応答性分子 |
Research Abstract |
鉄(II)スピンクロスオーバー錯体は熱・光などの外場によって低スピン・高スピン状態を可逆に変換可能な双安定性分子として知られている。特に光によるスピン状態の可逆な変換(LIESST、Light Induced Excited Spin State Trapping)は、配位子と鉄イオンとの結合長の変化に伴う大きな構造・電子状態の変化を与えることが可能である。LIESST現象を示す分子を分子性導体に導入することができれば、光などの外場による伝導性の制御、新規な物性の発現が期待される。本研究では、「分子性導体-スピンクロスオーバー錯体ハイブリットシステムの構築」に焦点を絞り研究を行った。まず、窒素系三座配位子からなる新規スピンクロスオーバー錯体[Fe^<II>(dppOH)_2](PF_6)_2(1)を合成した。錯体1は光によりスピン状態を100%変換することが可能であることから、本研究における光応答性分子として有用である。この錯体1類縁体を用いたクリスタルエンジニアリングによるハイブリットシステムの構築を目的とし、部分酸化することで多様な分子性導体を与えることが知られている[Ni(dmit)_2]^<-1>をカウンターにもつスピンクロスオーバー錯体[Fe^<II>(dpp)_2][Ni(dmit)_2]_2(2)を合成した。その結果、鉄(II)錯体は結晶中に二分子独立に存在し、一つは高スピン錯体、一つはスピンクロスオーバー錯体であることがわかった。また、前駆体dppOHを出発原料として二段階の反応により分子内にTTFドナー部位をもつ新規配位子dppTTFを合成した。この配位子から得られる鉄二価錯体[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_2(3)において、二つのTTF部位はともに中性であり、結晶中で一次元カラム構造を形成している。さらに、錯体3のアセトニトリル溶液を酸化することにより酸化体[Fe^<II>(dppTTF)_2](BF_4)_4(4)を得た。
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