2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機電荷移動錯体における超高速光誘起絶縁体-金属転移の探索
Project/Area Number |
16038210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 博 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40201991)
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Keywords | 光誘起相転移 / モット転移 / 分子性結晶 / 絶縁体金属転移 / ポンププローブ分光 / 電荷移動錯体 / 電子格子相互作用 / 強相関系 |
Research Abstract |
モット絶縁体であるいくつかの分子性半導体において、反射型フェムト秒ポンププローブ分光法を用いて、光励起によるキャリアドーピングに基づく超高速の絶縁体-金属転移(光誘起モット転移)の探索を行なった。一次元モット絶縁体であるRb-TCNQ結晶を時間幅100フェムト秒の光パルスで励起すると、ギャップに対応するTCNQ分子間の電荷移動吸収帯のスペクトル強度が減少し、赤外域のスペクトル強度が増大する。この結果から、高伝導性を有する電子状態が生じていると予想される。しかし、詳細な解析から、電荷移動吸収帯から赤外域へのスペクトル強度の移動は大きくないことがわかっており、金属状態の生成には至っていないものと考えられる。同様な一次元モット絶縁体である(BEDT-TTF)(F_2TCNQ)において光励起を行なうと、やはりギャップに対応するCTバンドのスペクトル強度が減少し、赤外域のスペクトル強度が増大する。両者を比較したとき、Rb-TCNQでの光励起状態の緩和時間が約2ピコ秒であるのに対し、(BEDT-TTF)(F_2TCNQ)では、緩和時間は時間分解能(150フェムト秒)と同程度であり、極めて高速であることがわかった。したがって、時間分解能以下ではより巨大な応答(赤外域の反射率の増大)が生じていると考えられ、光誘起モット転移が生じているのではないかと予想される。Rb-TCNQと(BEDT-TTF)(F_2TCNQ)の光応答の違いは、電子格子相互作用の違いによるものと考えられる。(BEDT-TTF)(F_2TCNQ)では、電子格子相互作用が小さくポーラロン効果が生じにくいために、より金属化しやすいものと推測される。
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Research Products
(10 results)