2004 Fiscal Year Annual Research Report
有機超伝導体におけるペアリング対称性間の競合に関する理論的研究
Project/Area Number |
16038214
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
黒木 和彦 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (10242091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 慶忠 神奈川大学, 工学部, 特別助手 (90360213)
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Keywords | 有機超伝導 / ペアリング対称性 / フェルミ面 / スピン・トリプレット超伝導 / (TMTSF)_2X / (BEDT-TIF)_2X / FLEX / 臨界温度 |
Research Abstract |
(I)擬一次元有機導体(TMTSF)_2Xにおいてはスピン・トリプレット超伝導の可能性が実験的に指摘されているが、我々はそのペアリング機構として、スピン揺らぎと電荷揺らぎの共存に基づくスピン・トリプレットf波超伝導機構を提唱してきた。従来は現象論的な議論にとどまっていたが、今年度、本研究課題において微視的な模型に基づいてf波超伝導の実現可能性を調べた。鎖内の第三隣接サイト間までの相互作用、および鎖間最隣接相互作用を考慮した拡張型ハバード模型を考え、乱雑位相近似によりトリプレット、およびシングレット超伝導のギャップ方程式を解いた。その結果、第二隣接サイト間相互作用V'と鎖間相互作用V_⊥の和がオンサイト相互作用Uの半分程度あれば、f波超伝導がシングレットd波超伝導に勝つことがわかった。この条件は十分現実的であり、f波超伝導が実現している可能性を強く示唆する結果といえる。 (II)β'-(BEDT-TTF)_2Xは超高圧下で超伝導になり、電荷移動型有機錯体として、現在最高のTcを持つ物質である。これまでに木野らにより、ダイマー化が強い極限をとったシングルバンド模型に対するFLEX近似により、超伝導相図が得られているが、我々はダイマー極限をとらない2バンド模型に基づいたFLEX解析を行った。その結果、単一バンドの場合と同様の圧力領域に、現実的な値の超伝導臨界温度を得た。2バンドにすると1/4フィリングになるにも関わらず、比較的高い臨界温度が得られることは、フェルミ準位近傍にvan Hove特異点があることと関係があると考えられ、このことが現実の物質において最高のTcを有することと関係している可能性がある。
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Research Products
(10 results)